研究課題/領域番号 |
18J21808
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 敦希 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | バイオセンサシステム / 時分割電力供給 / 集積回路 / 回路設計 / CMOS |
研究実績の概要 |
本研究は,時間分割で信号変換や通信などの動作を制御することにより,高い効率で微小生体エネルギーを利用して動作するバイオセンサシステムの実現を目的とする.バイオセンサシステムへの電源供給および発電量をバイオセンシングに利用することができるバイオ燃料電池をバイオセンサシステムの電源と想定し,開発を行う. 本年度は,バイオ燃料電池の発電量をディジタル信号に変換するための発電量信号変換回路の開発を行った.集積回路のクロック信号の生成などに利用されている発振器回路を用いた低消費電力温度センサ回路のアーキテクチャを応用し,発電量信号変換回路を実現した.発電量信号変換回路には,2種類の電源電圧感度を持つ発振器回路,バイオ燃料電池の発電量を電源電圧の変化として周波数に変換する変換用発振器回路と発電量信号変換回路の動作タイミングを制御する制御信号用発振器回路を実装した.2種類の発振器回路には,ゲートリーク電流を利用した回路技術を適用した.これにより,消費電力のボトルネックである参照電流源回路および参照電圧源回路を必要とせず,小面積で発振器回路を実装することが可能になる.さらに,非同期式カウンタ回路を用いて変換用発振器回路の周波数を計測することで,バイオ燃料電池の発電量をディジタル信号に変換する手法を実装することに成功した.また,変換用発振器回路の動作時間を制御信号用発振器回路で制限することで,待機時の消費電力を低減するアーキテクチャを採用した. 以上のような発電量信号変換回路の有効性を検証するために,実半導体集積回路の試作および評価を行った.評価結果より,発電量信号変換回路の電源電圧をディジタル信号に変換することに成功し,1.4 nWの待機消費電力を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高い効率で微小生体エネルギーを利用して動作するバイオセンサシステムを実現するためには,まず,バイオセンサシステムへの電源供給および発電量をバイオセンシングに利用することができるバイオ燃料電池に適した発電量信号変換回路の開発が必要であった.本年度は,発電量信号変換回路の設計および実半導体集積回路による評価を行うことができたため,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的であるバイオセンサシステムに必要な信号変換回路の設計を確立することができたため,今後は,無線通信回路についての研究を重点的に行う.既存の低消費電力で動作可能な無線通信回路技術を参考に,バイオセンサシステムに最適な時分割で各要素回路への電力供給を制御する手法を検討しながら,信号変換回路との統合を目指す.
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