研究課題
本年度も引き続き、脊椎動物種々の肝臓構造の比較、その違いを生み出す分子進化の研究を行い、その成果を学会等で発表し学術論文の執筆を行った。比較ゲノム解析により、進化的保存された転写調節領域(ECR)の候補を同定したが、肝臓進化には直接関わらない領域であると予想され、予定していたゲノム編集を用いたECR領域の機能解析は断念した。その一方で、jag1の分子進化・ゲノム進化に関しては引き続き解析を進めた。その結果、真骨魚類特異的なJag1重複遺伝子間では、様々な観点で保存傾向と革新傾向を示すことが明らかとなり、この傾向は重複直後の決定ではなく、各系統群間の進化の中で別々にその傾向が決定していることが明らかとなった。これらのバリエーションの違いが真骨魚類の多様性を引き起こしている可能性があり、これらに関して論文の執筆を行っている。また、本年度は、肝臓の起源・進化に迫るため、原始的な肝臓の探索を目標に行った。哺乳類から系統的に離れている円口類ヌタウナギとスナヤツメ、軟骨魚類イヌザメの肝臓が、形態学的・遺伝子発現的に哺乳類の肝臓と類似しているのかin situ hybridization法を用いて調べた。その結果、円口類の肝臓でも、肝機能を担う“肝細胞”と、胆汁を運ぶ胆管を構成する“胆管上皮細胞”は、哺乳類同様の遺伝子発現差で区別することができた。このことから、形態学的でも分子レベルでも顎口類と円口類の肝臓は類似していると明らかにし、脊椎動物は同一起源の肝臓を保持していると予想された。また、イヌザメの胚を使用した発生の比較解析では、軟骨魚類は哺乳類の肝発生様式と非常に類似した発生様式を有することが明らかとなった。このことから、軟骨魚類と哺乳類の肝発生システムは同一起源である可能性が高く、少なくとも顎口類誕生前後には哺乳類での肝発生システムと同様のシステムが確立していたことが予想された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Annals of Anatomy - Anatomischer Anzeiger
巻: 233 ページ: 151594~151594
10.1016/j.aanat.2020.151594
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