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2019 年度 実績報告書

「術」としての儀礼とその支配:『荀子』を中心とする儒家の術思想研究

研究課題

研究課題/領域番号 18J21916
研究機関東京大学

研究代表者

張 瀛子  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2021-03-31
キーワード荀子 / 儒教 / 中国思想 / 礼 / 術数
研究実績の概要

今年度の研究実績に以下の三つをあげる。
(1)予定通り第一年度の研究成果を発表することができた。2019年11月1日に台湾大学で開催された「中国文学研究 第49期第39届論文発表」において、「隠語、進諫与礼――論『荀子・賦篇』中隠語的特点与思想内涵」というテーマで報告を行なった。荀子の「談説の術」という概念を、従来の荀子研究では十分注目されなかった賦篇の読み直しによってその意味を明らかにし、『戦国策』や『韓非子』などのテキストと対照しつつ、その歴史的位置付けも行なった。論文は『中国文学研究』第49期(2020年2月)に掲載された。
(2)前年度に受理された二つの論文が共に掲載されたに加え、中国思想研究における方法論の問題を取り上げた陳少明氏の論文を翻訳し、「訓詁に因って義理に通ず――戴震、章太炎などを手がかりに清代漢学の哲学方法を論じる――」という題で『中国-社会と文化』第34号(2019年7月)に掲載された。
(3)日本中国学会第71回大会(2019年10月12日~13日)に応募し、「鄭玄の『周礼』注釈における漢の制度をめぐる言説― 中国の儒教経学における「古」と「今」について」を主題に研究発表を行う許可を頂いた。ただ、台風19号の影響で学会が中止となり、残念ながら遂行は叶わなかった。しかし10月25日の東京大学駒場人文学研究会第3回ワークショップ「古代の反復:その可能性について」で同様の内容を発表することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究は概ね予定通り進んでおり、第二年度は『荀子』の礼思想を古代中国における身体と精神の関係の文脈で解読した。現在では迷信とも言われる人相術は、古代中国では人間の内面(徳性・才能など)を外的特徴から見出そうとするある種の実践知識であり、人材の登用とも関係していた。これに対し、『荀子』非相篇における厳しい人相術批判は、従来、荀子の理性主義による迷信批判だと理解されてきたが、礼を人間判断の基準として彼が説いていたことを考えると、荀子は礼を人相より有効な人間判断の「術」として主張していたとも考えられる。内面が相応していない、すなわち形骸化した礼は「礼」ではあり得ず、その虚偽性は他者に見抜かれるからである。荀子の礼は人間の身体と内面を介在するようなものであり、彼の「談説の術」にもこのような彼の心身論が反映されている。『荘子』の「技」と「道」の関係、『管子』で語られている「養心術」などをも踏まえ、身体と精神を同時に扱う「術」としての荀子の礼論の再現を試みている。なお、第一年度の課題であった荀子の「談説の術」には未だに十分論じられていない内容もあるため、引き続き研究をしている。同時に荀子思想の後世における反響を考察するため、漢代儒教のテキストを調べている。

今後の研究の推進方策

(1)第二年度の研究成果を、一年度との整合も意識しつつ発表したいと考えている。また、本来は今年度に考察する予定だった荀子の術思想と漢代学術との関係は第二年度に変更されたが、テキストの解読と整理が終わっておらず、今年度引き続き実行しようと考えている。漢代儒教および道教思想における方術と礼論の他、荀子の「談説の術」の展開としての漢代の文学論をも視野に入れている。
(2)中国思想史上の荀子をめぐる議論についての考察をも同時進行する。清代考証学の中で高まった荀子への関心は、明清時代の中国思想における欲望の肯定の現れだとされている。一方、鄭玄をはじめとする漢代儒学を掲げ、宋代以来の儒教の権威である朱子学に異議を唱えたのが清代の「漢学」であるが、彼らの荀子再評価には、欲望肯定に止まらない内容があった。近現代の大きな変化の前段階において、荀子がどのように再解釈されたのか、その思想史における意味を考察したい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 隱語、進諫與禮――論《荀子》賦篇的思想性與時代意義2020

    • 著者名/発表者名
      張瀛子
    • 雑誌名

      『中国文学研究』

      巻: 49 ページ: p.1-p.40

    • DOI

      10.29419/SICL

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 王懋竑の『荀子存校』について――清初の考証学と朱子学2019

    • 著者名/発表者名
      張瀛子
    • 雑誌名

      『中国哲学研究』

      巻: 30 ページ: p.1-p.20

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 恵棟の『荀子微言』について―清代の荀子再評価と漢学の展開―2019

    • 著者名/発表者名
      張瀛子
    • 雑誌名

      『中国-社会と文化』

      巻: 34 ページ: p.141-p.160

    • 査読あり
  • [雑誌論文] (翻訳)訓詁に因って義理に通ず―戴震、章太炎などを手がかりに清代漢学の哲学方法を論じる―2019

    • 著者名/発表者名
      陳少明
    • 雑誌名

      『中国-社会と文化』

      巻: 34 ページ: p.186-p.213

    • 査読あり
  • [学会発表] 鄭玄の『周礼』注釈における漢の制度をめぐる言説-中国の儒教経学における「古」と「今」について-2019

    • 著者名/発表者名
      張瀛子
    • 学会等名
      日本中国学会第71回大会
  • [学会発表] 隠語、進諫与禮―論『荀子・賦篇』中隠語的特点与思想内涵2019

    • 著者名/発表者名
      張瀛子
    • 学会等名
      台湾大学中国文学研究第49期第39届論文発表会
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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