研究課題/領域番号 |
18J21929
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 優樹 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | ウクライナ史 / ロシア史 / 民族問題 / 国制史 / 第一次世界大戦 / ロシア革命 / 東欧史 |
研究実績の概要 |
平成30年度の研究計画は、①先行研究の整理、②国内外での史料調査、③学会発表・論文投稿、であった。 ①については、多言語で書籍として刊行された二次文献を科学研究費で購入するとともに、国内外の雑誌に論文として掲載された最新の研究成果をフォローした。民族問題、領域自治と文化自治、自決権などについては、他地域の歴史研究や、他分野の研究をも吸収することで、自らの研究をより大きな文脈のなかに位置付けることを目指した。 ②については、主に国外で史料調査を行った。ドイツのベルリンでは、州立博物館で1918年のドイツ軍によるウクライナ占領についての史資料を収集した。ウクライナのキエフでは、ウクライナ政府・行政最高機関中央国立文書館およびウクライナ国立図書館において、未刊行の一次史料と日本での入手が困難な刊行史料を収集した。また、書店でも刊行史料と二次文献を購入した。 ③については、国際学会で一回(スラヴ・ユーラシア研究者東アジア大会、7月、ウランバートル)、国内学会で一回(ロシア・東欧学会第47回研究大会、10月、神戸)研究報告を行い、いずれの報告成果も論文として投稿するに至った。前者は、1917年のウクライナへの自治導入時に臨時政府に協力的であったペトログラードの穏健派ウクライナ人集団の活動について、史料調査の成果をもとに初めて明らかにした研究であり、英文雑誌に投稿し、審査中の段階である。後者は、1918年にウクライナにあらわれた諸国家の外交政策が、目指すべきとされた国制と密接に関連していたことを明らかにしたもので、次号の『ロシア・東欧研究』に査読論文として掲載されることが決定している。さらに、『ロシア史研究』102号には、ブレスト=リトフスク条約についての最新の研究であるBorislav Chernev, Twilight of Empireの書評を、ウクライナ史研究の立場から執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画であった①先行研究の整理、②国内外での史料調査、③学会発表・論文投稿について、それぞれ当初の計画通り、一部はそれ以上の進展が見られ、研究はおおむね順調に進展しているといえる。 ①については、専門領域の先行研究の整理と批判的検討を行い、その成果を用い、学会発表や投稿論文において、自身の研究を研究史のなかに位置付けた。さらに、本年度には学会発表や論文投稿を行わなかった1919年以降の時期についても、準備段階として先行研究を整理した。さらに、自らの研究をより広い文脈のなかにおくため、常に他地域、他分野の研究もフォローしている。 ②については、三週間強にわたってベルリンおよびキエフに渡航し、充実した史料調査を行うことができた。とりわけ、ウクライナ国立図書館の手稿部では、1917年にペトログラードで活動していたウクライナ人のうち、特に重要な人物であるペトロ・ステブニツキーの個人史料を閲覧することができた。この成果は、国際学会での発表を英語論文に改稿する際に盛り込まれた。 ③については、国内外の学会でそれぞれ一回ずつの報告を行い、さらに邦語論文と英語論文を一本ずつ投稿した。そのうち邦語論文は査読論文として採録が決定し、また既に刊行された『ロシア史研究』107号には書評が掲載された。これは当初の予定以上の進展であり、①先行研究の整理と②史料調査の成果を、学会や雑誌での公開へと円滑につなげることに成功したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、①先行研究の整理、②史料調査、③学会発表と論文投稿を行っていく。そして、今年度と同様、①と②の成果を、すみやかに、かつ研究史的に意義のある議論とともに、学会や雑誌といった場所で公開していくことを目標とする。 ①については、平成30年度までに既に基本的な研究は整理が完了しているので、常に更新される最新の研究動向をフォローするとともに、ウクライナやロシアの専門誌など、手が届きにくい媒体の研究を積極的に探してゆく。また、平成30年度以上の比重を、他地域、他分野の関連する研究の整理に割く予定である。 ②については、5月から9月にかけて研究指導委託制度を用いてキエフのモヒラ・アカデミー国立大学で在外研究を行うので、その機会を利用する。平成30年度は主に首都の中央機関の文書館で作業を行ってきたが、県や市など、地方レベルの文書館の史料にも重要なものがあるので、それらも調査する。 ③については、平成30年度と同様に、学会報告で研究者からのフィードバックをうけ、論文投稿につなげていく。
|