本年度は、コロナウイルス蔓延により研究が遅延した昨年度から研究期間を延長した6ヶ月間(4月から9月)の研究実績を報告する。アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患の原因となるタウタンパク質の毒性に対する脆弱性と糖代謝変化との関連について調べてきた。これまでに、グルコーストランスポーター(GLUT)の過剰発現により細胞内への糖代謝取り込みを増やすと、タウによる細胞死が抑制されることがわかった。このGLUTの保護的機能メカニズムについてショウジョウバエを用いた遺伝学的アプローチで調べたところ、神経細胞の支えるグリア細胞の関与がわかってきた。毒性タンパク質タウを発現させた個体を電子顕微鏡で観察したところ、グリア細胞の異常が見られた。またグリア細胞から放出される免疫関連遺伝子の発現上昇やグリア細胞による食作用の関与が見られた。興味深いことに、GLUTを発現させることで、電子顕微鏡で見られたグリア細胞の異常や免疫関連遺伝子の発現上昇が抑えられることがわかった。以上の結果は、7月の日本神経科学大会での口頭発表、および9月の東京都立医学研究所でのオンライン招待講演で発表した。現在は、”Enhancement of glial glucose uptake mitigates tau-induced cell death via suppression of glial phagocytosis”というタイトルで論文執筆中である。
|