本年度は以下の点で成果があった。 1. 共振器の雑音源考察。昨年度、先行研究で報告された偏光変化雑音が本研究でも観測された。今年度はさらなる調査を行った。その例として、共振器のミラーを回転アライメントを変えながら雑音を測定を行った。その結果、雑音が共振器のミラーの回転アライメントに非依存とわかった。これは観測している雑音は複屈折雑音であることを示唆している。 2. 共振器雑音源の理論計算。上述の結果を踏まえて、共振器の複屈折雑音の理論計算を行った。熱雑音によるひずみの変化と光弾性効果が結合して生じる複屈折ゆらぎについて、揺動散逸定理を用いた直接計算を試みた。結果、既知の物性値では、熱雑音の効果は、雑音限界と思われていたショットノイズを上回ることが判明したものの、実測を説明するには至らなかった。今度は、この熱雑音の観測実験などを行うことで雑音の本質に迫ることができることが分かった。 3. 真空複屈折の長期測定。11月から12月にかけて真空複屈折の長期測定を行った。合計1ヶ月に渡る測定はパルス磁石を用いた測定としては最長の測定時間であり、統計量は過去の100倍であった。これは共振器制御の長期安定性の向上の結果である。このデータを用いて真空複屈折の探索を行った。得られた統計精度はQED理論値に対してあと1000倍程度の感度であり、共振機の雑音スペクトルから期待される感度とほぼ無矛盾であった。この結果を踏まえて、パルス磁石を用いた真空複屈折実験としてQED理論値感度に達成するために必要なアップグレードを議論することができた。
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