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2018 年度 実績報告書

「小説の芸術化」から見た19世紀英国小説の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18J22013
研究機関東京大学

研究代表者

勝田 悠紀  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2021-03-31
キーワードリアリズム / ヴィクトリア朝小説 / 深さ / 没入 / ポスト・クリティーク / メディア
研究実績の概要

採用初年度となる2018年度の研究は、①これまでの研究の整理・見直しと、その主要な部分の発表、②これらを踏まえた上での今後の研究の展望の精査、文献調査が主な内容であった。
①西洋文学史、特に英国文学史における「小説の芸術化」を考えるにあたって、「リアリズム」の導入・発展は避けて通ることのできない重要な要素である。筆者は「リアリズム」を、19世紀の他言説との複合的な関連のなかで生じた、小説空間における「深さ」の創出、拡張の観点から考察してきた。2018年度前半はこの理論的な枠組みを検討し直し、ディケンズの小説などの具体的な作品に即して「リアリズム」における「深さ」の問題を考察し直すことに費やされた。この研究の成果の主要な部分は、2件の学会発表にて他の研究者に公開された。
②こうした過程のなかで、筆者は上記の研究を進めるにあたり、「没入(と演劇性)」、「アイロニー」といったテーマが重要であるという認識を深め、夏期以降はこの領域での文献調査に取り組んだ。現在もこの作業は継続中であり、まだその成果を形にするには至っていないが、筆者はこの着眼点が本研究において極めて本質的な役割を果たすとの確信を深めている。また、この研究の副産物として、「深さ」の主題を現代の文学批評の問題として捉えた「ポスト・クリティーク」の議論への関心を展開させ、「今村夏子とポスト・クリティーク」と題された論文を執筆するに至った。
こうした内容を研究の軸としながら、筆者は同時に、19世紀小説を考える上で「メディア」の問題が上記研究を補完しうると考え、文献調査を行った。「キャラクター」理論と「メディア」理論との交錯をディケンズのキャラクターの歴史的位置をめぐって追求する論文「ポータブル・キャラクターズ――ディケンズの複製技術」はその成果として書かれたものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画のなかで、2018年度に予定していた作業は、2019年度以降のアウトプットの基盤を形成する文献調査が中心であった。これについては、おおむね予定通りの速度で進行している。また、調査を進めるなかで比較的まとまった形にできた部分については、学会で発表し、フィードバックを得ることができた。これにより、2019年度以降の研究の見通しは明るくなったと言える。
上に記した通り、「没入」や「アイロニー」など、当初の研究計画には含まれていなかったキーワード、着眼点が浮上してきてはいる。しかしこれは、当初の研究計画の進捗を妨げるというよりも、予定された研究の形に大枠では沿いつつ、それを豊かにするような形で出てきたものだと考えている。これについては、2019年度以降に十分に展開させられるよう、万全を期したい。
以上の理由により、2018年度の研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価する。

今後の研究の推進方策

前年に引き続き国内外の学会に積極的に参加し、情報収集、人的交流を行う。研究へのフィードバックを得るためできる限り発表も行う。1北 米の学会としては、現代語学文学協会(1月)、19世紀学会(3月)の大会、2英国の学会としては、英国ヴィクトリア朝研究協会(8月)の大会、3 国内の学会としては、日本英文学会(5月)、ヴィクトリア朝文化学会(11月)、日本フランス文学会(6月、10月)への参加を予定。3はブリティッ シュ・ライブラリーおよびヴィクトリア・アルバート博物館での1次文献(作家の蔵書、手書き原稿など)の調査を兼ねる。 ※1、2の経費とし て、計60万円(往復渡航費15万×2、現地移動費5万×2、滞在費1日1万 ×20日=20万) ※3の経費として10万円(移動費4万×2、滞在費1万×2)を 予定 ※研究に必要でかつ図書館に所蔵されていない書籍の購入費用として40万円を予定(1冊4千円 ×100冊)。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] ポータブル・キャラクターズ――ディケンズの複製技術2019

    • 著者名/発表者名
      勝田悠紀
    • 雑誌名

      リーディング

      巻: 39 ページ: 71-88

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 今村夏子とポスト・クリティーク2018

    • 著者名/発表者名
      勝田悠紀
    • 雑誌名

      エクリヲ

      巻: 9 ページ: 256-71

  • [学会発表] Becoming Mature Enough to be a Child, or Revaluation of Victorian Happy Endings2018

    • 著者名/発表者名
      Yuki Katsuta
    • 学会等名
      Conference of the Society for Novel Studies
  • [学会発表] Vanishing Depths: The Spatio-Temporal Structure in Little Dorrit2018

    • 著者名/発表者名
      Yuki Katsuta
    • 学会等名
      Dickens Symposium

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公開日: 2019-12-27  

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