研究実績の概要 |
本研究はゴールデンハムスターを解析モデルとして,哺乳類の「雌の生殖細胞」におけるPIWI-piRNAの分子機能解明を目的としている.本年度は以下に挙げる3つの成果を挙げた. 1. ハムスターにおけるゲノムデータの構築:ハムスターのリファレンスゲノムは公開されているものがあるが,ATGC以外を意味する”N”が全体の約20%を占めており,特にトランスポゾンをはじめとするリピート領域がアセンブルできておらず,piRNAの解析に不向きであることが問題であった.そこでPacBio Sequel用いたゲノムアセンブリを試みた結果,シーケンスは約100Xカバレッジの深度を得ることに成功し,アセンブルによって約3,000本のscaffoldを得ることができた. 2. ハムスターにおけるPIWI-piRNAの単離および解読:我々はこれまでに高品質な抗PIWIL1, PIWIL2, PIWIL3モノクローナル抗体の作製に成功し,PIWIL3はMII oocyteのみで19-21塩基長の非常に短いRNAが結合していることや,PIWIL1はMII oocyteから2-cell embryoにかけて結合するpiRNA群の塩基長が短くなることを明らかにした.今年度はこれらをより詳細に解析するため,超並列シーケンサーを用いてPIWIL1およびPIWIL3にそれぞれ結合するpiRNA群の配列を解読した. 3. MII oocyteにおけるPIWIL3の分子量変化の解析:我々はこれまでに,PIWIL3タンパク質がMII oocyteでのみ分子量が増加することを明らかにしたが,これが何によって引き起こされているのかは不明であった.そこでこの原因を明らかにすべく,抗体や酵素を用いた生化学実験をおこなった.結果,リン酸化修飾を受けていることが明らかとなった.
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