今年度は、非エルミート系におけるブロッホバンド理論を用いた応用的な研究を行った。 まず、1次元非エルミート系における例外点を伴ったトポロジカル半金属相の出現機構を解明した。この半金属相は、トポロジカルに自明な絶縁相と非自明な絶縁相の中間相として出現する。そして、その出現は一般化ブリルアンゾーンに起因する。つまり、系のパラメータ変化に応じて一般化ブリルアンゾーンが縮退点を保持するように変形する。このようなブリルアンゾーンの変形はエルミート系では見られない。したがって、このトポロジカル半金属相は非エルミート系に特有である。 次に、ボゾン型Bogoliubov-de Gennes方程式で記述される系を上記のブロッホバンド理論を用いて解析した。その結果、このような系は非エルミート表皮効果を発現することを見出した。非エルミート表皮効果とは、バルクの全ての固有状態が系の境界に局在する現象のことである。さらに一般化ブリルアンゾーンを計算することで、系にエルミート性と非エルミート性がそれぞれ共存していることを明らかにした。本研究により、ボゾン型Bogoliubov-de Gennes方程式で記述される系が本質的に非エルミート系であることが解明された。 最後に、エルミート系における高次トポロジーに由来した非エルミート表皮効果の研究を行った。これまでに、2次元系における非エルミート表皮効果は系のエッジに局在することが知られていた。本研究において我々は、系のコーナーに局在する状態の存在を理論的に予言した。そして、この状態はエルミート系における高次トポロジーによるバルク・コーナー対応に起因していることを示した。エルミート系における高次トポロジーは結晶対称性が重要な役割を果たす。したがって、今後、非エルミート系における結晶対称性とそれに由来した高次トポロジーの役割が解明されることが期待される。
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