研究課題/領域番号 |
18J22114
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松澤 仁志 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 地震波トモグラフィー / 表面波 / 高次モード / アレイ解析 / 北米大陸 |
研究実績の概要 |
地震表面波は上部マントル~マントル遷移層の広域な3次元構造モデルの復元に必要不可欠な情報源である.特に,より深部に感度を有する高次モード表面波を利用することで,深さ200km以深の構造を詳細に調べることが可能である.本研究では,マルチモード表面波の位相速度情報を用いて,「波線」と「波面」に基づく計測情報を組み合わせた,新たな地球深部3次元異方性不均質構造の高精度イメージング法の確立を目的とする. これまでに開発してきた独自の解析手法(「長さ2000-4000 kmスケールの1次元アレイ解析に基づくマルチモード表面波位相速度計測法」および「線形ラドン変換を用いたモード波形分離法」)について,まず理論地震波形を用いてその実用性の検証を行った.その結果,アレイ直下の構造が一様ではなくても,問題なく複数のモードの位相速度を計測することができ,分離モード波形をアレイの重心位置に復元可能であることが分かった.空間的な構造の変化がある場合に各モードの位相情報を独立に復元できる点は特に重要であり,このことは実データから復元した分離モード波形に対して2次的な位相速度解析を適用できることを意味している. 続いて,米国の高密度広帯域地震観測網USArrayにおける波形記録を利用し,解析手法を観測波形へと応用した.これにより,分離モード波形が2次的な位相速度解析に利用可能であることが実証された.また,北米大陸の典型的な速度構造を反映するマルチモード位相速度分布を復元することができた. 上述の内容を含む,理論波形と観測波形を用いた独自手法の実用性の検証に関する論文を国際誌に投稿しアクセプトされた.さらに,研究成果について,AGU Fall Meeting 2018をはじめとする国内外の学会にて発表し,日本地球惑星科学連合大会2018年大会では学生優秀発表賞に選出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り,解析手法の実用性の検証に重点を置き研究を遂行した.中でも,分離モード波形の再解析への利用可能性(2次元アレイ解析による位相速度・到来角度計測)の実証は,本研究課題の中核をなす“「波面」に基づくマルチモード表面波の計測情報の利用”への出発点として特に意義深いと考える.さらなる解析手法の改善を重ねながら,地球深部3次元構造モデルの復元に向けて,着実に研究を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
約10年分のUSArrayでの観測記録から分離モード波形から,2次元アレイ解析によるマルチモード位相速度・到来角度の再計測を行い,表面波トモグラフィーに実装する.このために,2ヶ月ほど渡米し,米国の研究者との共同研究を行う予定である.それぞれ大量に収集した,2000-4000km程度の長い1次元アレイでの計測値と,数百kmスケールの2次元アレイでの計測値を同時に用いたインバージョンを行い,北米大陸域周辺の上部マントル~マントル遷移層の3次元モデルを復元する.また,異方性モデルの復元や,より深部の遷移層~下部マントルの構造推定にも取り組む.
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