血管は全身に隈なく存在する組織であり、一般に三層からなる。その最内層を構築しているのが血管内皮細胞である。この血管内皮細胞は組織や器官によってその形態的構造が異なることが知られており、物質交換が盛んな組織では小孔を持つことや、動静脈と毛細血管のように径の違いなどがある。この様に形態学的な異質性があることは知られている一方で、各組織に存在する血管内皮細胞といったミクロな視点における多様性についてはあまり知られていない。近年、血管内皮細胞にも他の細胞集団で見られるように、多様性な細胞集団の集合であることが明らかとなった。その中で、血管再生能が高い内皮細胞、いわゆる幹細胞様の細胞に特異的に発現している細胞表面マーカーが同定されたといった報告を当研究室では行なってきた。本研究では、この幹細胞様内皮細胞に着目し、これらの幹細胞性維持のメカニズムを解明することや、また、その他の内皮細胞においても機能的分類を行うことを目的として研究を行なった。研究方法としては、単一細胞レベルで遺伝子発現レベルを解析することができる、シングルセルRNAシーケンシング(scRNAseq)解析を行った。特に、虚血性疾患モデルを作成し、血管再生と幹細胞の関係性に着目して解析を行った。解析の結果、本年度は以下の事が新たに示唆された。 ①血管再生に貢献する内皮細胞集団で特異的に活性化しているシグナル経路が存在する ②加齢により血管の再生能力が低下する原因となるシグナル経路が存在する
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