2020年度はウマの個体間距離を制御する力のダイナミクスの推定および群れのまとまりに影響する要因の検討をおこなった。当初の予定では、野外調査地であるポルトガル、アルガ山に渡航し群れの移動場面のデータ収集を行う予定だった。しかし、コロナウィルス蔓延の影響により、予定を変更し、既存のデータの解析をおこなった。 ウマの個体間距離を調整しているメカニズムを明らかにするため、個体間に作用している力をモデル化し、数値シミュレーションを用いて、その形および作用範囲を推定した。力のモデルとして、個体間距離が近い場合、個体は互いに反発し、遠い場合、互いに近づくことを想定した。観測値を説明できるようなパラメータセットを探索したところ、およそ4胴長前後で反発と誘引が逆転し、誘引の範囲は8胴長以内というような力が最も実測値を説明できた。 ウマの群れのまとまりに影響する要因を検討した。群れサイズ、群れ内のオス数、群れ間における相対的空間配置の3つの要因を検討した。さらに本研究では、群れのまとまりを最小凸包で表した場合と平均最近接個体間距離で表現した場合の違いも検討した。その結果、群れ内のオスの数のまとまりへの影響は確認できなかったが、群れ間において、より中心に位置する群れは小さくまとまっているという結果が得られた。さらに、群れサイズにおける結果では、群れのまとまりを最小凸包で表現するか、最近接個体間距離で表現するかによって、異なることがわかった。 これらの研究結果は現在国際誌に投稿され査読中である。
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