1)ノメイガ類の性フェロモン利用形態の分析: ノメイガ類におけるHybrid type(タイプIとタイプIIの性フェロモンを併用する種)の普遍性を明らかにするために、本年度までに52種のノメイガ類を性フェロモンの抽出~カラム分画~生物検定に供試した。このうち48種はタイプI画分に対し高い応答を示したことから、ノメイガ類の大部分の種はタイプIのみを性フェロモンとして用いていると考えられた。一方で、アヤナミノメイガ、チビコブノメイガ、シロオビノメイガ、ツマグロシロノメイガの4種はタイプIとタイプIIの混合物に対して高い応答を示したため、Hybrid typeである可能性が高いと考えられた。この結果から、ノメイガ類においてHybrid typeの種は少数派であることが示唆された。 2)ノメイガ類の分子系統解析: 核(RpS5、CAD、EF-1a)およびミトコンドリア(COI)の塩基配列に基づき、日本産ノメイガ類全体の系統推定を行った。その結果、ノメイガ類が狭義ノメイガ亜科とヒゲナガノメイガ亜科に分かれること、先行研究において認められていた族の多くが日本にも存在することが確認された。また、DNAと形態の両者を調査することで、日本産ノメイガ類には複数の隠蔽種が存在することが明らかになった。 3)Hybrid typeと系統の関係: 1で明らかになったノメイガ類の性フェロモン利用形態を2の分子系統樹に重ね書きしたところ、Hybrid typeの種は狭義ノメイガ亜科には存在しない一方で、ヒゲナガノメイガ亜科ではその大部分の族に存在することが明らかになった。
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