研究課題/領域番号 |
18J22262
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
森 隆裕 新潟大学, 新潟大学大学院 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ホプキンソン棒法 / 関節軟骨 / 力学的特性評価 |
研究実績の概要 |
日本の高齢化社会において,高齢者の生活の質を極めて阻害する変形性関節症の主たる発生原因は関節軟骨の変性および摩耗である.関節軟骨は組成の大部分を水が占めており,粘弾性特性を有している.また,関節軟骨の働きとして,関節に加わる衝撃を緩和する役割を持つと言われている.そのため,ひずみ速度に伴う力学的特性の変化を同定する必要性があるが,関節軟骨などの生体組織の動的な力学的特性を評価する手法は確立されていない. 研究目的は,関節軟骨などの生体組織を対象とした動的な力学的特性の評価手法を確立することである.本研究ではホプキンソン棒法(Split hopkinson pressure bar : SHPB)を用いた動的試験について,一次元波動伝ぱ理論に基づいた衝撃応答解析および実験的解析手法の確立を行った. 従来のSHPB法では入・出力棒に金属材料(弾性体)が用いられている.しかし,本研究の試料は関節軟骨を対象とするため,試料と入・出力棒の音響インピーダンスの差が大きく,ひずみ波を計測することが困難であった.そこで,入・出力棒に比較的音響インピーダンスの小さい高分子材料を用いる必要があるが,入・出力棒内を伝ぱするひずみ波の減衰・分散特性を同定しないと試料である関節軟骨の動的力学的特性を評価できない.今年度においては高分子材料中を伝ぱするひずみ波のスペクトル解析と粘弾性波動伝ぱ解析を行うことによって減衰・分散特性を同定し,関節軟骨の力学的特性を評価することを可能にした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度においては入・出力棒である高分子材料中を伝ぱするひずみ波のスペクトル解析と粘弾性波動伝ぱ解析を行うことによって減衰・分散特性を同定し,関節軟骨の力学的特性を評価することを可能にした.交付申請書では,試験装置を作成し,入・出力棒内を伝ぱするひずみ波の減衰・分散特性を同定し,試料の動的力学的特性を評価可能にすることとしているため,当初の計画通りに進展していると考えられる. さらに,試料である関節軟骨を試験する前に,アクリル材を試料として予備試験を行った.結果として正しい動的な弾性率を計算できることを確認した.これにより,関節軟骨の動的な力学的特性を評価することが可能になったと考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から関節軟骨の動的な力学的特性を評価することが可能になったと考える.そこで今後としては,関節軟骨の動的試験から力学的特性を評価する. また,変形性関節症においては関節軟骨の固形基質であるコラーゲン繊維とプレテオグリカンが変性すると言われている.そこで,関節軟骨の固形基質の約6割を占めているコラーゲン繊維を酵素処理によって人為的に変性させ,正常な軟骨とコラーゲンが変性した軟骨との力学的特性の変化を調査する.
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