研究課題
(1)軟X線磁気円二色性吸収分光を用いたホイスラー合金Co基ホイスラー合金の多くは、ハーフメタルになることが予測されており、この特異な電子構造を利用し、デバイス応用が試みられている。さらにX線磁気円二色性(XMCD)吸収分光により、非磁性元素も磁気モーメントをもつことも分かってきた。一方、そのスペクトル形状は複雑であり、その物理的な解釈については未だ説明できていない。そこでCo2MnGe (Ga)フルホイスラー合金薄膜においてGa (Ge) L2, 3吸収端におけるXMCDをSPring-8 BL23SUにて観測した。その結果XMCD スペクトルが非磁性元素のPDOSの差分を反映していることが分かった。(2)レーザー光を用いたスピン分解光電子分光装置の開発令和元年度は、スピン検出器付近のパラメータの調整を行い、その後テスト測定を行った。その結果、ARPESの測定は成功したが、ソフトウェアのバグおよびレーザー光源の故障のため、スピンの測定は行えなかった。(3)トポロジカル絶縁体(TI)における両極性表面光起電力TIは結晶内部では絶縁体であるが、その表面では金属的なディラック表面状態が存在する。その表面電子は不純物に対して後方散乱が抑制されるという特徴を持っていることから、TIを用いたデバイス開発が期待されている。最近、TIに光照射することで生じる表面光起電力(SPV)効果を利用することで、スピン偏極した光電流を取り出す提案がなされているが、デバイスへの応用を考える際、スピン偏極電流の方向を自在に制御する必要があり、正負両極性のSPVが実現することはとても重要である。しかしながら、一方向のSPV効果しか報告されていない。そこでBi2Te3に着目し、p形とn形の良質Bi2Te3単結晶について時間分解ARPESを用いて二方向のSPV効果の観測を試み、世界で初めて成功した。
2: おおむね順調に進展している
広島大学放射光科学研究センター(HiSOR)には、超低速電子線回折(VLEED)を用いたスピン検出器が放射光ビームラインに設置されており、エネルギー可変性を持つ放射光源と組み合わせることで、優れた研究成果を出している。VLEEDスピン検出器は、従来型の広く普及しているMott検出器に比べて検出効率が100倍程度改善されており、世界最高性能の検出効率を誇っている。また、VLEEDスピン検出器を2つに配置することで、スピン偏極度の3次元成分全てを観測することも可能である。我々は、直角に配置したVLEED検出器2台と6 eV レーザー光源を組み合わせることで、大強度、微小スポットサイズ、偏光可変性等のレーザーの特性を最大限利用したスピン分解光電子分光装置の開発を進めている。令和元年度は、スピン検出器付近の光電子の速度を減速するパラメータの調整を行い、さらにレーザー光源のフォーカシングを行い、微小スポットを実威厳した。その後テスト測定を行ったその結果、角度分解光電子分光の測定は成功したが、当初予期していなかったソフトウェア上のバグおよびレーザー光源の故障のため、スピンの測定は行えなかった。しかし、前々年度が順調に進行していたため、計画に遅れは出ていない。
レーザー光源の微小スポット化により空間分解角度分解光電子分光の測定は成功したが、当初予期していなかったソフトウェア上のバグおよびレーザー光源の故障のため、スピンの測定は行えなかった。しかし、前々年度が順調に進行していたため、計画に遅れは出ていない。令和2年度はソフトウェアの修正が行われ次第、光源の調整およびスピンの測定テストを行い、問題なければ運用を開始する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
Physical Review Letters
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