研究課題
本研究では,分散分布の概念を導入した尺度混合分布族に基づいて筋電位信号の確率モデルを提案し,筋活動中のゆらぎの定量評価を行なう.また,提案する確率モデルの枠組みを他の生体信号へ応用することで,確率モデルベースドな生体信号中のゆらぎ評価法を確立し,生体信号識別や評価への展開を目指す.本研究員は当該年度,上記の確率モデル構築に関する枠組みの提案と,それに基づき生体信号中の潜在的特徴を解析する理論的研究に従事した.さらに,提案する確率モデルの応用として生体信号識別などの研究を行った.主な成果は以下のとおりである.■尺度混合分布に基づく表面筋電位信号モデルの提案筋電位信号のガウス性が分散のゆらぎによって決定されるという仮説に基づき,尺度混合分布ベースドな筋電位信号の確率モデルを提案した.実験では,提案モデルが実際のデータに対して高い適合度を示したほか,分散の分布のパラメータが筋活動中の潜在的な特徴を反映していることを明らかにした.この研究成果はIEEE TBMEに掲載決定し,現在早期公開中である.また,現在このモデルを用いた筋疲労評価への展開を行なっており,その第一報を国際会議IEEE EMBC 2019で発表予定である.■確率モデルに基づく筋電パターン識別法の提案構築した筋電位信号のモデルに基づき,信号中のバラツキを考慮可能な筋電パターン識別法のプロトタイプを提案した.実際の筋電位信号に対して動作識別実験を行なった結果,提案法は従来手法と比較して高い精度で動作を識別可能であることが確認された.本研究成果は,国際会議 IEEE EMBC 2018において高く評価され,IEEE EMBS East and Central Japan Chapter/West Japan Chapter Young Researcher Awardを受賞した.
1: 当初の計画以上に進展している
■当初の計画通り,尺度混合分布に基づく生体信号モデルの枠組みの構築と,その枠組みに基づく筋電位信号の解析実験を行なえたため■当初の予定より早く,パターン識別法への応用を試み,期待以上の精度を実現できたため■筋電位信号のモデルだけでなく,脳波に対するモデルの構築も行なえたため
今後は,提案する確率モデルの枠組みを基礎技術とし,実用性のあるシステムの構築や,より幅広い生体信号への応用を進めていく.次年度には,以下の三つに取り組む.■生体信号の時系列的な特性変化を考慮するため,モデル構造またはパラメータ推定式の改良を行なう.これにより,効率的なパラメータ推定を実現するとともに,将来の状態の推定へと繋げる.■昨年度構築した筋電パターン識別法をさらに発展させ,筋活動中のゆらぎを考慮した新たな機械学習アルゴリズムへと応用する.具体的には,識別器をベイズモデルへと展開することで,学習用データから識別器の複雑さを自動的に獲得可能なメカニズムを導入する予定である.■昨年度構築した脳波のプロトタイプモデルについて,実際の計測データに対する解析を通してモデルの有効性を検証し,必要に応じて改良を行なう.解析対象としては,てんかん発作時や睡眠中の脳波を検討している.これにより,てんかん発作の自動検出技術や,睡眠ステージに応じた特徴変化を定量的に評価する技術の開発へと繋げる.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Robotics and Mechatronics
巻: 31 ページ: 27~34
10.20965/jrm.2019.p0027
IEEE Transactions on Biomedical Engineering
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1109/TBME.2019.2895683
電気情報通信学会誌
巻: 102 ページ: 印刷中