研究課題/領域番号 |
18J22434
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩澤 佳太 慶應義塾大学, 商学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | 原価情報 / 原価計算 / 情報品質 / 経営意思決定 / コストマネジメント / 間接費配賦 |
研究実績の概要 |
第一に,これまでの研究成果に関してのアウトプットを行った。本研究課題の着想に至った修士論文研究をベースに,本研究の中心概念である「原価情報品質」概念に関する概念フレームワークの構築およびフィールドスタディによる検証の結果に関して,国内学会で口頭発表(日本原価計算研究学会および日本管理会計学会)を行った。これらを踏まえて,国内査読付き学術誌に投稿した結果,次号への掲載が決まっている。 この研究は,隣接学問の知見の援用によって,原価情報に求められる特性を網羅的かつ体系的に整理したことに貢献が認められる。これにより,実務上有用とさせる原価情報の要件を提示することが出来たことに加え,正確性など一部の特性に焦点が偏重していた先行研究に対して,新たな視座を加えることができた。 第二に,本研究課題の中心となる実証分析を行うため,工場での社内アンケート調査を実施している。調査協力企業を募ると共に,調査先の工場見学や,経理部長および課長・工場長・生産管理部長などを対象としたインタビュー調査を行い想定している仮説の強化を行った。より具体的には,原価情報の提供者である経理部門とマネジャーと原価情報の利用者でありかつ工場の管理者である工場長を対象に,原価情報に求めていることや,それらがおよぼしているであろう効果に関して聞き取り調査を行った。またその際に,先方と質問票に関するディスカッションを行い,より現場の感覚と一致した質問票の設計を心掛けた。その結果,2018年3月までで,2社3工場で質問票調査を実施することができ,約60のサンプルを回収できた。加えて,来年度にはさらに3工場を対象に同様の調査を実施する承諾を得ることもできた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既述の通り,これまでの研究結果は,学会発表や査読付き学術誌への投稿を通じて,順調にアウトプットできている。また調査協力を快諾頂いている企業も複数あり,調査に必要なデータの収集も順調に行うことが出来ている。 加えて既に収集したサンプルを利用して,予備分析を行ったところ,想定していた仮説と概ね整合的な結果も出ており,これまでの研究はおおむね順調に進展していると言えよう。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,引き続き工場内アンケート調査の実施が中心となる。既に調査の承諾を得ている企業の工場を訪問し,データ収集を継続すると共に,約100を超えることが想定される得られたデータの分析を進める。またそれと同時に工場長や経理部門長などへのフィールドスタディを通じて仮説の構築・強化,分析結果に関するディスカッション等を積極的に行い,実務感覚とも合致した知見の提供を行う。これらの分析・研究を通じて,どのような原価情報がなぜ・どのように工場のコストマネジメント活動・パフォーマンスを改善するのかを経験的に解明する。具体的には,これまでの研究で構築・実証してきた「原価情報品質」概念の援用により,その効果を統計的に実証することで,先行研究では実証されてこなかった原価情報とパフォーマンスの関係性を解明することが期待されている。 また第二の研究の実施に加えて,昨年度までに実施してきた研究とも知見を統合し,コストマネジメントと原価情報に関する統合的なフレームワークの構築および実証も意図している。理論的に有用とされてきたコストマネジメント手法は数多くあり,各々の実態調査も進んできているが,それらの関係性や相乗効果・補完効果など,複数の手法の関係性や効果に関する実態は明らかではない。そこで,コストマネジメント手法・コストマネジメント行動・第2の研究で扱う原価情報の品質,それらのパフォーマンス等に関して体系的なフレームワークを構築することができればその貢献は大きいと考える。 そこで,第2の研究と同時に,文献調査,工場現場や経理部の訪問調査などのフィールドスタディを通じて,理論的な仮説・フレームワークを構築したい。 また昨年度実施してきた研究に関して,学会報告を積極的に行い,国内外の学者の意見を幅広く募った上で,学会誌への論文投稿などアウトプットも行っていく予定である。
|