研究課題
本年度は、前年度に引き続き、雄の自己免疫性糸球体腎炎モデルマウスに精巣摘出を施し、アンドロゲンが腎病理形成に関与するメカニズムの解明を目指した。糸球体腎炎モデルとして雄BXSB/Yaaを用いた。3週齢時に全身麻酔下で精巣摘出または擬手術を施し、3から6ヶ月齢の間、用手で膀胱圧迫により採尿した。6ヶ月齢の腎臓について、組織および分子生物学的に解析した。腎病態形成におけるアンドロゲンの機能を考察するため、アンドロゲン受容体の局在を免疫染色で調べた。糸球体細胞に陽性反応はみられなかった一方、糸球体包外壁の上皮細胞(PEC)の核内に陽性反応を認めた。PECは足細胞傷害や糸球体硬化病変と関連していることが示唆されており、特にCD44を発現した活性化PECが病態形成に関与することが近年報告されている(Eymael et al. Kidney International 2018)。免疫染色により、6ヶ月齢の両群において、傷害を示す糸球体に面するPECの一部はその細胞膜上にCD44を発現することがわかった。さらに、糸球体包周囲長あたりのCD44陽性PEC数、CD44陽性PECを含む腎小体率は、擬手術群よりも精巣摘出群で有意に低いとともに、6ヶ月齢時の糸球体硬化面積およびその面積比、尿中アルブミン/クレアチニン比と強い正の相関を示した。また、両群で一部のPECは細胞増殖マーカーKi67陽性を示し、その陽性細胞数は精巣摘出群で擬手術群よりも有意に減少した。以上、精巣を摘出したBXSB/Yaaは、初期に自己免疫病変を悪化させた。一方、病態後期の精巣摘出群はその糸球体硬化病変を擬手術群よりも有意に減少させ、その病態形成にはアンドロゲンによるPEC機能への関与が示唆された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Experimental Biology and Medicine
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10.1177/1535370221996010