研究課題/領域番号 |
18J22516
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 篤史 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | コアシェル粒子 / SPC / ゲート吸着 / 複合化 / 核生成速度 |
研究実績の概要 |
本年度では,これまでの研究で合成に成功していたZIF-8,ZIF-67と呼ばれるSPCから構成されるZIF-8コア-ZIF-67シェル(ZIF-8@ZIF-67)粒子およびZIF-67@ZIF-8粒子の吸着等温線を詳細に評価し,複合化による吸着挙動変化のメカニズム解明につながる知見を得た。 ZIF-8@ZIF-67粒子の吸着等温線は,ZIF-8粒子とZIF-67粒子が示した吸着等温線の単なる足し合わせとは異なり,特異なゲート吸着挙動を示すことがわかった。このことから,コア部とシェル部のSPCはコア/シェル界面を通じて協奏的に構造変形していると考えられる。一方,ZIF-67@ZIF-8粒子の吸着等温線は,ZIF-8粒子とZIF-67粒子が示した吸着等温線の単なる足し合わせと一致することがわかった。これは,コアとシェルの界面における結晶構造が一続きになっておらず,協奏的な構造変形が発現しなかったためと考えられる。コアシェル粒子は,シェルとなるSPCの原料の溶液とSPCコア粒子懸濁液を混合,反応させることで合成しているため,シェルとなるSPCの析出速度が大きい場合,コアとシェルの界面において結晶が一続きにならない可能性が高い。そこで,ZIF-67シェル,ZIF-8シェル形成実験時の濃度条件でZIF-67粒子,ZIF-8粒子を合成し,得られた粒子の粒子径を基に古典的核生成理論に則って核生成速度を見積もると,ZIF-67に比べて,ZIF-8の核生成速度は大きいことが確認された。このことから,特異な吸着挙動が見られなかったZIF-67@ZIF-8粒子のコアとシェルの界面では結晶が一続きになっていない可能性が高く,コア部とシェル部のSPCの協奏的な構造変形はコア/シェル界面を通じて発現するという仮説は有力であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究実施計画通りとは言えないものの,複合化に由来する特異な吸着挙動を発現させるための必要条件である可能性が高い因子を発見し,複合化による吸着挙動制御手法確立に向けた指針となる結果を得たことから,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
シェルがエピタキシャルに成長したZIF-67@ZIF-8粒子と,コアとシェルの界面に結晶欠陥が多く存在するZIF-67@ZIF-8粒子を合成し,それぞれのゲート吸着に伴う構造変形をin-situ XRD測定によって追跡することで,コア部とシェル部のSPCの協奏的な構造変形はコア/シェル界面を通じて発現することを実証する。シェルがエピタキシャルに成長したZIF-67@ZIF-8粒子の合成にはpostsynthetic exchangeと呼ばれる,シェルが原理的にエピタキシャルに成長する手法を,コアとシェルの界面に結晶欠陥が多く存在するZIF-67@ZIF-8粒子の合成にはこれまでの研究で用いた合成手法をそれぞれ用いる。
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