研究課題/領域番号 |
18J22576
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
水野 勇磨 東京工業大学, 情報理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 3次元多様体 / クラスター代数 / ルート系 / Yシステム |
研究実績の概要 |
本年度は、ミューテーション・ループの不変量について研究を行った。ミューテーション・ループとは曲面の写像トーラスをクラスター代数の組み合わせ論的な構造に着目して一般化したものであり、その不変量とは3次元多様体の位相不変量のミューテーション・ループへの拡張にあたる量のことである。体積予想によって、3次元多様体の量子不変量の漸近挙動には双曲幾何的な位相不変量が現れることが予想されている。報告者はそのことに着目し、ミューテーション・ループに付随する量子クラスター変換の漸近挙動として現れるべき不変量についての研究を行った。得られた結果は次の通りである。
(1) ミューテーション・ループに付随する量子クラスター変換の漸近挙動の次主要項に現れるべき量を定義して、その量がクラスター変換の微分の特性多項式の特殊値と一致することを証明した。またその帰結として、ペンタゴン関係式のようなクラスター変換間の非自明な関係式から、不変量を定める行列式間の非自明な関係式が得られることがわかった。
(2) 有限型のディンキン図形およびレベルから定まる周期的なYシステムに付随するミューテーション・ループに対する前述の不変量をルート系を使って記述する公式の予想を与えた。さらに、この予想をディンキン図形がA型でレベルが2の場合に証明した。予想で与えた公式から、この場合の不変量はKac-Petersonによって考えられていたアフィンLie代数の可積分最高ウェイト表現の漸近的次元という量と本質的に一致することがわかる。特に、(1)の結果と合わせることでクラスター変換の固定点における微分がアフィンLie代数の表現論における漸近的次元を与えるという予想を得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限型のディンキン図形およびレベルから定まる周期的なクラスター変換の固定点における微分の固有値をルート系を用いて記述する公式を見出だすことができ、それによってクラスター代数とアフィンLie代数との間の定量的な関係が導出されることがわかった。この公式はディンキン図形がsimply lacedな場合だけではなくnon-simply lacedな場合も含むものであり、当初想定していた中でもベストな形で固有値の解釈を与えることができた。公式は一般の場合にはまだ証明できていないが、コンピューターによる計算で多くの例で確かめることができている。
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今後の研究の推進方策 |
Yシステムについての一般論を整備する。特に、一般の周期的なYシステムに対して、対応するクラスター変換の固定点における微分の固有値を記述する公式を模索する。その応用として、有限型のディンキン図形およびレベルから定まる周期的なYシステムについての予想を、一般の周期的なYシステムについての公式を適用することによって解決することを試みる。また、三角形分割された曲面の写像類から定まるYシステムについての研究も行う。
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