研究課題/領域番号 |
18J22593
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西岡 宣泰 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 金属球 / ガラス / CW-LBI / 連続発振レーザ / 導入 / マニュピレーション |
研究実績の概要 |
非接触で微小物体の位置制御を行う新しい光マニュピレーション技術として、レーザ照射によりガラス内部へ微小な金属球を導入し、軌跡に金属球の成分をドープする連続波背面照射法が提案されている。高出力のレーザを照射すると、金属球は軌跡に金属を拡散しながら高速移動する。また、工業応用には金属球の安定的な導入や光学的高機能ガラスの試作が必要となる。 本研究では、工業応用に向けた金属球の移動制御およびガラスの高機能化を最終目標とし、高速撮像、軌跡の成分評価、発光スペクトル解析や駆動モデルの熱流体解析により高速移動および導入メカニズムの解明を行う。また、ガラス内部で特殊な発光、蛍光を示す金やネオジム元素を軌跡に拡散させ、光学的高機能ガラスの試作を行う。最終的に金属球の挙動原理の体系化を行い、金属球による多機能3次元光導波路などの光学素子への応用の可能性を明らかにする。 本年度は、高速移動する金属球のガラス内部への金属拡散特性および高速移動の発光スペクトル解析の結果に基づき、高速移動の駆動モデルを作成した[1]。数値解析の基礎技術を学ぶことで、駆動モデルの熱流体解析に着手へと進めている。また、金属球がガラス内部へ導入されるメカニズムが分かっていない。そこで、ガラス内部に安定的に金属球を導入できる手法[2]、導入される金属球の直径を制御する手法[3]を開発した。本手法に基づき、さらに入熱モデルが単純な導入方法を開発することで、導入の駆動モデルを作成が可能になり、今後導入のメカニズムの解明が進むことが予想される。さらに、光学的高機能ガラスの試作として、金のガラス内部への導入条件の検討を行う。成果発表として、国内外の学会へ参加する。また、[1]および[2]-[3]は、それぞれ国際学会および国内学会で口頭発表を行った。加えて、[1]は、3月に英語論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画していた(1)高速移動のメカニズムの解明、(2)導入メカニズムの解明、(3) 光学的高機能ガラスの試作の3項目について研究を遂行し、概ね順調に進展した。 特に、(1)に関しては、(1-1)高速移動のメカニズムの解明、(1-2)高速移動のモデリング、(1-3)レーザ照射条件と高速移動時の軌跡の相関関係の調査、の3つのテーマを遂行した。また、(1-1)-(1-2)については、2019 International Conference on Smart Scienceにて、計1件の口頭発表を行った。さらに、(1-1)-(1-3)については、2019年3月にOptical Expressに英語論文を投稿した。加えて、(1-3)については、現在論文を執筆中である。 (2)に関しては、(2-1)安定的な金属球の導入方法の開発、(2-2)導入される金属球の直径の制御、の2つのテーマを遂行した。(2-1)-(2-2)については、2018年度精密工学会秋季大会学術講演会および2019年度精密工学会春季大会学術講演会にて、ポスターおよび口頭発表の計2件の発表を行った。開発した2導入方法に基づき、さらに入熱モデルが単純な導入方法を開発することで、導入の駆動モデルを作成が可能になり、今後導入のメカニズムの解明が進むことが予想される。 (3)に関しては、(3-1)金のガラス内部の導入、において金属の中でも金がガラス内部に安定して導入する条件が厳しいことが分かった。この課題を解決するために、再現性が取れる導入条件を模索・提案している段階である。金の安定した導入条件が確立することで、(1)で確立した金属球がガラス内部を高速移動するメカニズムや高速移動時に生成される金属を含有する軌跡の特性制御の手法を応用して、光学的高機能ガラスの試作が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
前年に引き続き、金属球が高速移動する現象のより正確なモデリングを目的に、レーザ条件や金属元素、ガラスの種類が高速移動に及ぼす影響を調査する。まず、単一元素から成る金属球が高速移動する場合に対して、挙動や軌跡の特性をまとめる。その後、複数元素から成る金属球が高速移動する場合に対して、拡散位置の元素依存性を調べる。金属球が高速移動する際の、挙動、軌跡の特性、元素依存性をモデリングして、熱流体解析を行うことで、移動メカニズムの解明を実現する。 さらに、前年度に作成した導入の駆動モデルに対して、導入時に照射するレーザの操作方法や照射条件を変えることにより、導入の駆動モデルの精度を向上させる。さらに、高速移動と導入で類似する点に対しては、高速移動で得た技術を活かし、導入の熱流体解析を行うことで、導入メカニズムの解明を実現する。 また、解析結果をもとに得られた金属球の導入メカニズムについて、レーザ(波長、パルス幅)や材料(ガラス、金属)を変更した条件下で実験を行い、そのメカニズムの妥当性を検証する。レーザや材料により、導入に必要であるレーザの照射条件が異なる場合、導入の駆動モデルに対して、適宜補正を行う。 最後に、本現象による応用技術として、金属球の軌跡に金もしくは希土類元素(ネオジム等)を拡散させることにより、軌跡への着色、蛍光特性を有する光増幅器の試作を実現する。ガラス内部に拡散した金が、粒子径に依存して発色が異なる特性を活かして、高速移動時のレーザ条件の変更(前処理)、もしくは高速移動後のガラス試料への熱処理(後処理)によって、軌跡の発色を制御する。また、拡散させる希土類金属の種類の拡大および拡散量の制御を行い、軌跡の蛍光特性を制御する。この際、発色、蛍光特性の評価は、入射した光に対して発光する光の波長および増幅率を分光器で計測、評価する。
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