研究課題
本研究は,太平洋の深海堆積物及び魚類の歯の多元素同位体比 (Nd, Sr, Pb等) を分析することで,(1) レアアース泥を含む南鳥島周辺海域の深海堆積物を構成する起源成分を明らかにし,(2) 超高濃度レアアース泥の生成機構と海洋環境変動の関連を解明することを目的としている.2018年度は,南太平洋の2地点の全岩化学分析データセットを解析し,堆積物試料を選出するとともに,既存のデータセットを拡充するために,南鳥島周辺海域における追加試料選出を行った.2018年度に研究対象とした南太平洋の2地点の堆積物コアから,各20層準ずつ分析対象層準を選定した.それらの層準から分取した計40試料の全岩堆積物試料に対してNd-Sr同位体分析を実施した.さらに,その中の8試料においては,魚類の歯の取り出しを行い,Nd-Sr同位体分析に供した.また,南鳥島周辺海域における追加試料として,魚類の歯試料7試料,マンガンノジュール試料8試料を採取し,Nd-Sr同位体分析を実施するとともに,堆積物試料25試料から砕屑物成分の分離を行い,化学分析の実施に向けた準備を実施した.なお,Nd-Sr同位体比分析は,海洋研究開発機構 (JAMSTEC) 内の表面電離型質量分析計 (Thermal Ionization Mass Spectrometry; TIMS) を使用した.また,分析前の試料の前処理は,JAMSTECクリーンルーム,東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻内の実験室で実施した.さらに,千葉工業大学次世代海洋資源研究センタークリーンルームの立ち上げに携わり,新規にPb同位体分析を可能とした.
2: おおむね順調に進展している
2018年度の間に,堆積物試料,魚類の歯及びマンガンノジュール試料計63試料のNd-Sr同位体分析及び堆積物試料25試料の分離作業を実施し,実験室作業を計画通りに進めている.また,筆頭研究者として,国内学会2回,国際学会1回の口頭発表を行うとともに,論文1本を地球化学分野の国際誌に投稿し,定期的に研究内容の発表を実施している.以上のことから,問題なく研究が進展していると考えられる.
引き続き,新規太平洋コア3本の全岩化学分析データセットの解析を進め,堆積物試料計60試料を選出する.選出した堆積物試料に関しては全岩Nd-Sr同位体分析及び魚類の歯の採取を進める.また,これまでに得られた南太平洋及び南鳥島周辺海域の堆積物試料,魚類の歯及びマンガンノジュール試料のデータの再解析を行い,必要に応じて,新規試料の追加分析を実施することで,太平洋全域の深海堆積物の起源成分及び南太平洋の海洋循環の変遷の解明につながるデータセットの構築を目指す.以上のように取得されたデータは,適宜,国内外の学会にて発表するとともに,論文化を進め,地球化学分野の主要な国際誌への投稿を目指す.さらに,研究対象海域における研究航海への乗船を通じて,研究内容に対する理解を深め,研究者として必要な技術の研鑽に励む.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
Ore Geology Reviews
巻: 102 ページ: 260~267
https://doi.org/10.1016/j.oregeorev.2018.09.001