研究課題
本研究は,太平洋の深海堆積物および魚類の歯の多元素同位体比 (Nd, Sr等) を分析することで,(1) レアアース泥を含む南北太平洋の深海堆積物を構成する起源成分を明らかにし,(2) 太平洋における超高濃度レアアース泥の生成機構と海洋環境変動の関連を解明することを目的としている.2019年度は,北西太平洋から1地点,南鳥島周辺海域から1地点,および南太平洋から2地点の計4地点の多元素同位体分析を実施した.まず,2018年度から継続し,北西太平洋および南太平洋の2地点の堆積物コアから採取した計27試料の全岩堆積物試料に対してNd-Sr同位体分析を実施した.さらに,南鳥島周辺海域コアおよび南太平洋コアから魚類の歯試料20試料の取り出しを行い,Nd-Sr同位体分析に供した.また,2018年度および2019年度に分析・測定を実施した全岩堆積物試料20試料から砕屑物成分の分離を行い,Nd-Sr同位体分析に向けた前処理までを終了した.なお,Nd-Sr同位体比分析は,海洋研究開発機構 (JAMSTEC) 内の表面電離型質量分析計 (Thermal Ionization Mass Spectrometry; TIMS) を使用した.また,分析前の試料の前処理はJAMSTEC内のクリーンルームで,魚類の歯の取り出しおよび砕屑物成分の分離作業は東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻内の実験室で実施した.
2: おおむね順調に進展している
2019年度の間に,堆積物試料および魚類の歯試料計47試料のNd-Sr同位体分析,および砕屑物成分20試料の分離作業を実施し,実験室作業を計画通りに進めている.また,筆頭研究者として,国内学会2回,国際学会1回の口頭発表を行うとともに,論文1本を地球化学分野の国際誌に発表し,定期的に研究内容の発表を実施している.特に,2回の国内学会発表においては,研究成果が評価され,学生発表賞を受賞した.以上のことから,問題なく研究が進展していると考えられる.
2020年度は,南太平洋および北西太平洋コアから採取した魚類の歯のNd-Sr同位体比分析を引き続き実施する.また,分離作業を実施した砕屑物成分のNd-Sr同位体分析を実施し,太平洋全域の深海堆積物の起源成分の持つNd-Sr同位体について考察を行う.最終的に取得したデータの解析を行い,国内外の学会発表や地球化学分野の主要な国際誌への投稿を実施する.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
Ore Geology Reviews
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