研究課題/領域番号 |
18J22775
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 裕文 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | データ解析 / 数値計算 / 時間周波数解析 / 統計的信号処理 / 流体力学 / 3次元熱対流系 / 大規模渦 |
研究実績の概要 |
本年度は、当該研究に関連する2つの話題を扱った。1つは初年度からの引き続きであるブラインド信号源分離・ブラインド再構成を用いた音声信号モデルに関する話題で、また1つは調査により得られた流体力学における3次元熱対流系の数値計算およびそのデータ解析に関する話題である。以下、それぞれの実施状況を記す。 昨年度のブラインド信号源分離・ブラインド再構成に関する調査・研究を通して、既存モデルにノイズを加えた場合の解析手法の検討を行った。ノイズ等の揺らぎを含む信号源分離問題に対しては何らかの推定手法が必要であり、ベイズ推定をその第一候補として適用の有効性・効率について検討した。既存手法にベイズ推定を組み込む場合、初年度の調査検討を超えて、既存モデルや手法を大きく刷新する、あるいは根本的に異なるアプローチをする必要があると判明した。そのため既存モデル・手法の再検討を行い、研究遂行の調整を図っている。 次に流体モデルに関する話題を報告する。先の音声信号モデルの調査途中で、流体モデルに関する興味深い話題を得ることができた。それは、3次元熱対流系の数値計算を用いた大規模渦の形成解明に関する話題で、流体力学の重要な課題になっている。これは本研究においてもデータ解析という点で重要な課題になり得るため、情報収集を進めた。情報を調査検討したところ、本研究によるデータ解析手法を用いることで、大規模渦に関する特徴が明らかになる可能性があるとわかった。現段階においては、大規模な数値計算を多数のケースで行い、データの収集を進めている。予備的な計算により、大規模渦が生成されることを再確認しており、数値計算は良好な進捗状況にある。また、生成データに対する解析手法の検討を行い、大規模渦の構造や形成解明への糸口を模索している。データがある程度集まり次第、検討中の解析手法を順次テストしている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究方針の検討に時間を要したため、進捗状況に遅れを取った。本年度の主たる目的は2つあり、1つは既存手法に推定手法を導入することであり、また1つは音声信号以外の他トピックの検討であった。推定手法の導入では、昨年度の調査検討からベイズ推定を候補として既存手法への統合を試みたが、既存手法の厳密性がネックとなり、根本的な改案が必要となることが分かった。そのため、当初予定より多くの調査検討が必要となっている。一方、他トピックの検討では、流体モデルに関する興味深い話題を得ることができた。実際に、その流体モデルの当該研究への適応検討を行ったところ、試験的な実験で良好な結果が得られた。そのため、様々なケースで数値計算を行いデータの収集をし、得られたデータに対する解析手法の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、音声信号モデルと流体モデルの2つについて、研究の進捗状況に応じて取り組む話題を選択しつつ、研究を進めていく。音声信号モデルでは、推定手法を既存手法へ統合することが目下の目標となるが、根本的な改案が必要であり、調査検討に大幅に時間を要することが見込まれる。流体モデルでは、引き続き3次元熱対流系の数値計算を行い、特徴的と思われるケースのデータを収集し、そのデータの解析手法を検討していく。データ収集においては、大型計算機による大規模な数値計算を行っていくことで、さらなる研究推進を図っていく。また、データ解析手法の検討では、基本統計量の計算から各種物理量の詳細な検討を行い、大規模渦形成の解明につながるようなデータ解析手法の開発を目指す。
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