脂質膜は機能性分子の新しい標的として、自己組織化二重層構造を調節することにより細胞機能を調節することが可能である。今までの研究成果で、ゲスト分子を用いて、炭化水素鎖領域から表面までの異なる領域で脂質膜を修飾することにより、ゲスト分子が異なる領域の膜特性に及ぼす影響を調べた。特に、外来分子が脂質膜異なる領域の水和状態をどのように修飾するかを明らかにした。 1.炭化水素鎖領域でパッキング密度を調節することにより、膜の構造の全体的な水和状態を変化させることが可能となる。2.界面領域の水素結合ネットワークを変化させることで、境界領域の水和状態を制御することができる;3.膜の表層領域でゲスト分子と表層に水和していた水分子の交換が起こることにより、膜表層の脱水効果が考えられる;4.先端が親水性の官能基を持つ両親媒性分子を脂質膜に修飾することで膜表面層に水和シェルを形成できる。 ここから判断すると、各層の水和状態がゲスト分子によりどのように調節されるかがわかる。そして、ヘッドグループの調節とパッキング密度の調節が自己集合系の水和状態に対して大きな影響を及ぼしていると考えられる。この知見に基づいて、ヘッドグループの水和シェルとパッキング密度の制御に着目して、自己組織化薬の設計を行った。 そこで、ケーススタディとして、Oxaprozinという非ステロイド系医薬品(抗炎症剤)に鎖長の異なる脂肪酸分子をアミド結合させた分子集合性医薬品を対象に、各種の集合体表層の水和構造を評価し、pHをはじめとする生体膜環境の変化に応じて、効果的に細胞内送達する条件の提案に結び付けておる。このように「水和」の観点に着目した自己組織化薬分子の設計によって,さまざまな脂質膜を標的とした次世代のDDS開発に貢献できると考えられる。
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