研究実績の概要 |
研究はヘテロール縮環ベルト型パイ共役化合物の合成および物性の解明を目的として行った。具体的には目的物の前駆体となる置換基をもたないシクロ[8]チオフェンの合成を目指した。この化合物の合成は山子らによって開発されたシクロパラフェニレンの合成法に従った。スタンニル基をもつビチオフェンに対し、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)白金と金属交換を行い、白金四核錯体とした後、過剰の配位子を作用させることで還元的脱離を行った。シクロ[8]チオフェンの生成はNMRおよび質量分析から確認した。また、吸収スペクトルは既知の置換基を有するシクロ[8]チオフェンのものとおおよそ一致した。 一方、上記の研究以外にも本研究室で開発したテトラボリルテトラチエニレンを前駆体として、B-N置換およびC=N置換テトラチア[8]サーキュレンの合成にも成功した。得られた化合物の構造をそれぞれ、X線結晶構造解析により明らかにしB-N置換体はサドル型構造、C=N置換体は平面構造をとっていた。またパッキング構造から、これらの分子はB-N, C=N部位の双極子モーメントを分子間で打ち消しあうように配列していることがわかった。特にC=N置換体については炭素類縁体とは異なり一次元カラム構造を形成することがわかった。また、C=N置換体は電気化学測定から高い電子受容性をもつことがわかり、炭素類縁体と同様、濃度依存NMRから溶液中で会合挙動を示すことがわかった。
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