研究実績の概要 |
今年度は、配位ケモジェネティクス法による細胞種選択的な活性化に必要な酵素応答性キレーターの合成および光応答性のキレーターの合成を行なった。具体的には、酵素としてヒトには存在しないブタ肝臓エステラーゼ (PLE)を選択した。この酵素によって選択的に加水分解される1-メチルシクロプロピルエステル部位を有するPd錯体を合成した。本錯体のin vitroでのPLEによる加水分解評価をHPLCによって行なった。すると本錯体は非特異結合のためかPLEの活性を減弱してしまい、錯体の加水分解はほとんど起こらないことがわかった。また、錯体の水溶性が低いため水系への溶解性が極めて悪く、PLEを用いる系は適用困難であることが示唆された。今後の方針としては、使用する酵素-基質ペアの変更を行う必要があると考えられる。光応答性のキレーターとしては二光子励起効率が高いケージド化合物であるクマリンを骨格として種々錯体を合成した。光照射による錯体の脱ケージドをHPLCによって評価した。すると、Pd錯体を用いた場合、光による分解は見られなかった。これは、重原子効果に起因するものと考えられる。そのため他の金属(Cu,Niなど)では光による分解が観測できた。しかし、これらの分解された錯体では変異受容体を活性化することができない。そこで変異体を作成しスクリーニングによって様々な錯体による活性評価を行った。すると、いくつかのPd以外で活性化可能な錯体がヒットした。また、新たに活性が阻害できるような錯体もヒットしたので現在は阻害の系について詳細な検討を行っている。
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