研究課題/領域番号 |
18J22952
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小島 憲人 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ケモジェネティクス / 阻害 / ケージド |
研究実績の概要 |
ケモジェネティクス法は、人工受容体を特定の細胞に発現させて人工受容体選択的な合成リガンドを作用させることで生物個体における特定の細胞の活性を制御できるため神経回路研究において有用な手法である。しかし、従来のケモジェネティクス法では人工受容体を強制発現させる必要があり、実際の中枢神経系における受容体の局在や機能を反映していない。そこで、我々は、遺伝子工学と配位化学を組み合わせて内在の受容体を選択的に活性化する「配位ケモジェネティクス」を開発し、Pd錯体によるmGluR変異受容体の活性制御に成功していた。本研究では、光や酵素を利用した細胞種直交的な活性制御法の開発を行っている。これまでにケージドPd錯体が光によって分解しないことがわかっていた。そこで今年度は、配位ケモジェネティクス法よる細胞種選択的な受容体の活性制御を行うためにPd以外の金属錯体で活性制御が可能な変異受容体の作成を行った。すると、Cu(II)やNi(II)によって活性化可能な変異体の作成に成功した。さらにこれらの変異体の変異導入アミノ酸を最適化することでCu(II)に高い親和性を有する変異受容体の作成にも成功した。ケージドCu(II)錯体は過去の報告されているため、ケージドCu(II)錯体を作成することによって高時間空間分解能を有した受容体の活性制御を行うことができると考えられる。また、Pd錯体によって変異受容体選択的な活性阻害も可能となっており、変異アミノ酸を特定のモチーフにすることで汎用性の高い受容体の阻害法となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pd錯体を用いた光による活性制御は困難だと考えられたが、Cu錯体による活性制御が成功したことによってケージドCu(II)錯体を作成することで光による受容体の活性制御が可能になると思われる。また、活性阻害という新たな手法も生まれたため、阻害の系に配位ケモジェネティクスを展開できる段階に来ていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ケージドCu(II)錯体の合成を行うとともに、光照射による変異受容体の活性評価をモデル細胞にて行う。さらに、Ni(II)などの錯体での活性制御可能な変異体の作成も行おうと考えている。これが完了したら、変異受容体を細胞種特異的なプロモーターを介して発現させ受容体の細胞種直交的な活性制御を急性脳スライスや生物個体内で行っていこうと考えている。
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