現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はまず、従来のウエハ融着法に比較して光損失の低減が期待できる埋め込み再成長法の検討を行った。埋め込み再成長法においてはドライエッチングによって形成した柱状の空孔に再成長を行い、空孔を閉じることで従来の手法より欠陥の少ない構造が形成できる。しかしながら、再成長によって空孔の形状が小さくなるため、従来の2次元位置変調では、再成長前の空孔が一部重なってしまう問題が判明した。そこで、位置変調を1軸に制限する1軸射影変調を採用することで、空孔の重なりを回避して埋め込み再成長法による変調フォトニック結晶レーザーの作製に成功した。設計通りの角度への出射が確認された一方で、光出力のピークパワーは従来のデバイスと同程度(~10mW)に低く、また高電流注入時はビーム形状がドーナツ型になってしまうという課題があった。 そこで、上記の課題について、変調フォトニック結晶の原理からその原因を検討した。変調フォトニック結晶においては正方格子のM点の共振状態を利用している。M点ではバンド端A,B,C,Dの4つの定在波の固有モードが存在するが、バンド端A,Bでは電界の節に、バンド端C,Dでは電界の腹に空孔が位置する。従来の空孔の位置を変調する方式では、バンド端A,Bにおいては位置をずらすことで線形に電界を放射させることができるが、バンド端C,Dにおいては位置をずらしても、打ち消しあうままで電界を取り出せないことが明らかになった。デバイスにおいては放射および損失の小さいバンド端C,Dで発振したため出力パワーが弱く、ビームもドーナツ型になっていたと考えられる。そこで、全てのバンド端において消失性干渉の回避が可能な、複合変調という新たな変調方式を提案し、複合変調デバイスにおいて、性能の向上を初期的に実証した。以上の研究により、当初の予定を上回る成果を得ることができたため、当初の計画以上に進展しているといえる。
|