研究課題/領域番号 |
18J22997
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石井 拳人 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 硝化 / 亜硝酸酸化細菌 / 従属栄養細菌 / 分離培養 / 微生物間相互作用 / 増殖 / ゲノム解析 / プロテオーム解析 |
研究実績の概要 |
これまでの研究において,集積株から有機物をエネルギー源および炭素源とする従属栄養細菌Acidovoraxが淘汰されると,亜硝酸酸化細菌Nitrotogaの代謝活性が低下することを見出した。そこで本研究ではNitrotogaを亜硝酸酸化細菌のモデル微生物として用いて,「亜硝酸酸化細菌は従属栄養細菌から “生育因子” を受け取って代謝活性を上昇させる」ことの証明を目的とした。当該年度では,1)AcidovoraxがNitrotogaに及ぼす影響解析,2)プロテオーム解析に向けた質量分析器の運転条件の検討を実施した。 1)AcidovoraxがNitrotogaに及ぼす影響解析 飢餓ストレスを与える期間が長くなると,Nitrotogaの増殖が始まるまでの期間(誘導期)が長くなった。一般的に,飢餓ストレスを与えると細胞が休眠し,増殖に必要な準備期間が長くなることが知られている。飢餓ストレスを与えた後にAcidovoraxをNitrotogaと共存させると,Nitrotogaを単独で培養した場合よりも,Nitrotogaが早く増殖を始めた。したがって,Acidovoraxは “生育因子” を産生してNitrotogaの目覚めを早めた可能性が考えられる。 2)プロテオーム解析に向けた質量分析器の運転条件の検討 AcidovoraxがNitrotogaの増殖に及ぼすメカニズムを解析するためには,細胞内で起きている変化を捉える必要がある。そこで,細胞の表現型を左右するタンパク質の発現量を網羅的に解析(プロテオーム解析)することにした。プロテオーム解析で用いる質量分析器の運転条件(溶媒を流す流速,運転時間)を検討したが,安定してタンパク質を多く検出することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AcidovoraxがNitrotogaに及ぼす影響解析を調査し,当初計画していた段階まで達成している。昨年度の結果と合わせて,特定条件下でAcidovoraxがNitrotogaの増殖速度を早めること,また誘導期の期間を短くすることを明らかにしている。これらは,従属栄養細菌Acidovoraxが亜硝酸酸化細菌Nitrotogaの代謝活性を上昇させたことを示唆している重要なデータである。培養実験によって,従属栄養細菌を共存させると亜硝酸酸化細菌の表現型が変化することを証明できたため,上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本学が所有する質量分析器では,感度が低くプロテオーム解析が困難であると判断した。そこで,タンパク質への翻訳に利用されるmRNAの転写量を標的として解析(RNA-seq)を進めることにした。Nitrotogaを単独で培養した場合,NitrotogaとAcidovoraxを共培養した場合でRNA-seqを実施する。RNA-seqの解析経験はあるため,データの取り扱いには問題ない。
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