研究課題/領域番号 |
18J22998
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
女屋 崇 明治大学, 明治大学大学院 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ハフニウムジルコニウム酸化膜 / ハフニア / ジルコニア / 強誘電体 / 核生成層 / 極薄膜 / 原子層堆積法 / プラズマ原子層堆積法 |
研究実績の概要 |
本研究では、膜厚10 nm程度の極薄膜領域で優れた強誘電性を発現することで注目を集めている強誘電体HfxZr1-xO2 (HZO)薄膜の強誘電性向上及びそのメカニズムの解明に積極的に取り組んでいる。 我々は先行研究において、結晶化したZrO2層(2 nm)がHZO膜(10 nm)の強誘電相である直方晶相を形成するための核生成層として働き、結果として強誘電性が向上することを報告した。本年度はこれら結果をもとに、TiNを電極材料として用いたMetal-Ferroelectric-Metalキャパシタにおいて、HZO膜とZrO2核生成層の挿入位置を変えることでHZO膜の結晶性及び強誘電性が変化することから、ZrO2核生成層がHZO膜に及ぼす効果についてより詳細に明らかにした。また、2層のZrO2核生成層で強誘電体HZO膜を挟み込んだ新規積層構造を提案し、HZO膜の強誘電性の大幅な向上に寄与したことは大きな進展である。更に、このZrO2/HZO/ZrO2多層構造を用いることで、どのような電極材料上でも良好な強誘電性を得られることが予測されることから、強誘電体メモリだけでなく強誘電体FETといった様々なメモリデバイスへの応用が期待される。 続いて、我々は強誘電体HZO膜の成膜手法に着目した。原子層堆積(ALD)法の酸化剤ガスとして一般的に用いられるH2O及びO3よりも酸化能力が高いプラズマO2を用いたプラズマALD法を採用することで、プロセス温度300°Cの低温領域で更なる強誘電性の向上を実現できることを見出した。今後はこのメカニズム解明に取り組む必要がある。 これら研究成果は論文だけでなく、国内・国外の学会発表にて積極的に情報発信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで、我々は(a)ZrO2核生成層がHfxZr1-xO2 (HZO)薄膜の強誘電性及び結晶性へ及ぼす効果及び、(b)原子層堆積(ALD)法の酸化剤ガスとしてプラズマO2を用いて作製したHZO薄膜の強誘電性について調べて、そのメカニズムの解明に取り組んだ。これまでに得られた成果は、ECS Transactionに掲載されたと共に、現在、査読付き学術論文に2件投稿中である。また、筆頭で国際学会4件、国内学会3件を報告した。更に、2018年9月に“応用物理学会講演奨励賞”を受賞したことは、これら成果が本分野の発展に寄与したことが認められたものだと考えている。 これら研究成果は、我々の研究目的である強誘電体HZO薄膜の強誘電性向上及びそのメカニズムの解明に大きく寄与していると共に、近年注目を集めているHfO2系強誘電体膜分野及び絶縁膜分野において学術的にも貢献していると考えている。特に、プラズマALD法を用いて強誘電体HZO薄膜のプロセス温度の低温化(~300°C)を実現できたことは今後の強誘電体HZO薄膜のデバイス応用を考えた上で期待以上の進展であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、まず、ZrO2/HZO/ZrO2多層構造のデバイス応用へ向けて、原子層堆積(ALD)法によるZrO2核生成層が成膜時に結晶化するメカニズム、及びZrO2核生成層が強誘電体HfxZr1-xO2 (HZO)薄膜の結晶性及び強誘電性に及ぼす影響をより詳細に観察する必要がある。そのために、TiN/ZrO2及びZrO2/HZO界面の物理的評価が必須であると考えている。 続いて、ALD法の酸化剤ガスが強誘電体HZO薄膜の結晶性及び強誘電性に及ぼす影響について詳細に調べる必要がある。一般的に、プラズマO2はH2O及びO3と比べて酸化力が強いことが知られている。そこで、HZO膜の成膜手法としてプラズマO2を用いたプラズマALD法を採用することで、成膜温度が低温であっても良質な膜が得られると共に、成膜直後にHZO膜が結晶化し、結果として強誘電性が向上することが期待できる。従って、酸化剤ガスがHZO膜の初期結晶化にどのように影響するのか、また、TiN/HZOの界面状態を物理的評価によって明らかにする必要がある。 上記研究計画は、2019年4月~2020年3月にかけて、アメリカ・テキサス大学ダラス校のJiyoung Kim教授の研究室へ研究留学して実施する予定である。Kim教授の研究室には、ALD及びX線光電子分光(XPS)装置を組み合わせてIn-situ測定を可能とした日本国内には存在しない最先端の実験装置を所有している。この独自の装置を用いることで、原子レベルで反応が進むALD成膜モードを外部環境の影響を受けることなく詳細に明らかにできることから、HZO膜の強誘電性発現メカニズムの解明に大きく貢献できると考えられる。 今後進展した内容は、定期的に学会で発表して意見交換をすると共に、学術論文にて情報を発信する予定である。
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