研究課題/領域番号 |
18J23041
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仲尾 信彦 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 焦点接着斑 / タリン / 剛性 / AFM |
研究実績の概要 |
本研究では,細胞が周囲の基質と接着する場において,接着タンパク質が巧妙に相互作用することで,細胞外基質-細胞外骨格間の力伝達機能において重要な焦点接着斑の剛性が,能動的に増加するメカニズムの解明を目指す.そのため,本年度は,まず,接着タンパク質のタリンに着目した.タリンは,外力に対して自らの構造を変化させ,膜貫通型タンパク質インテグリンと骨格系タンパク質アクチンとの接続を強化させることが示唆されている.この働きにより,タリンは焦点接着斑の剛性を増加させると考えられる.そこで,タリンが焦点接着斑の剛性に与える寄与を明らかにするため,細胞内で発現するタリンの量の減少が,焦点接着斑の剛性増加に与える影響を調べた.そのために,細胞内のタリンの発現量を抑制(ノックダウン)する必要がある.ゆえに,まず,タリン1の遺伝子を標的にしたノックダウンプラスミドを細胞内に導入することで,干渉RNA作用によりタリン1のmRNAの分解を促進させることを試みた.次に,プラスミドの導入により細胞を回収し,タンパク質を抽出するため溶解した.その後,溶解液内のタンパク質を電気泳動により分子量に応じて分離し,ウェスターンブロットによりタリンの発現量を調べた.その結果,タリンの発現量は,プラスミドを導入することにより減少することが示された.以上の実験により,タリン1をノックダウンする細胞が作製されたことが示された.この細胞と通常の細胞のそれぞれの細胞膜表面において,AFMを用いて焦点接着斑を形成させ,その剛性を測定した.その結果,タリンの発現を抑制することで,焦点接着斑の剛性の増加は抑制されたことが示された.よって,タリンは,焦点接着斑の剛性増加に必要であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,細胞内のタンパク質をノックダウンしたり,タンパク質の定量のためにウエスターンブロットをしたりするなど,分子生物学分野で一般的に用いられる実験手法を取り入れ,接着タンパク質タリンが焦点接着斑の剛性に与える影響を明らかにすることに注力した.専門である機械工学分野外のこれらの実験において生じる問題を解決することに対し,当初予定していたよりも多くの時間が費やされた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,細胞内におけるタリンの機能や,それによる他の接着タンパク質の挙動に着目し,焦点接着斑の剛性の変化との関係を明らかにする予定である.
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