焦点接着斑を介した骨細胞の力学刺激への応答性が、細胞局所により異なるか否かを検証するため、マウス頭蓋冠から単離した骨細胞に対して、本研究で確立したAFM技術を用いることで、細胞突起上の点などの細胞局所において疑似的な焦点接着斑を作製し、それを介して力学刺激を負荷する実験系を構築し、同時に細胞のカルシウム応答を観察した。また、同上の細胞に対して、カルシウムイオンの細胞質内への流入箇所の分布が細胞局所で異なるか否かを検証するため、免疫抗体染色法と共焦点顕微鏡を用いた細胞観察により、骨細胞表面におけるインテグリンとカルシウムイオンチャネルの局在箇所に関して調べた。 さらに、焦点接着斑の振る舞いは、その足場となる細胞表層の局所的な構造、及び力学特性に依存するため、骨系細胞MC3T3-E1の表層において、AFMを用いて局所的な構造イメージングと剛性測定を行った。AFM構造イメージングにより細胞表層において、アクチン繊維と考えられる繊維状構造の不均一さ、及びそれらの構造と局所的な剛性との関係を明らかにした。細胞表層における他の不均一な局所構造として、細胞膜と考えられる低剛性の突出物が可視化され、そのサイズはアクチン皮質の分解により増大することを示した。以上のような細胞表層の局所構造の違いは、細胞接着の局所的な違いや、それにより生じる細胞内外の間における力伝達機能の違いをもたらすため、骨細胞応答の力学刺激に対する場所依存性を解明するうえで重要である。
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