本研究では、AGPの糸球体バリアー機能と抗炎症作用のユニークな特性を活用することで、糖尿病性腎症に対する新規治療薬として応用することを最終目標としている。透析導入原疾患の第一位である糖尿病性腎症では、尿中微量アルブミンの出現から始まり、進行とともに尿タンパクが漏出し腎機能が低下・廃絶していく。AGPは前述の作用による尿タンパク抑制効果に加え、糖尿病や肥満マウスにおける耐糖能異常やインスリン抵抗性の改善作用も報告されている。 以上のことから、AGPの糖尿病性腎症に対して腎障害改善効果に加え、根本となる糖尿病に対しての有用性を検討することを目的とし、1)未だ安定した病態モデルが確立されていない糖尿病性腎症マウスの作成、加えて近年慢性腎臓病への進展が数多く報告されている 2)急性腎障害後の腎線維化病態に対するAGPの有用性評価を試みた。 1) 方法として、片側腎臓摘出1週間後にストレプトゾトシン(STZ)75mg/kgの尾静脈内投与を3回行った。結果、STZ投与1週間後には顕著に血糖値が上昇したものの、アルブミン尿はSTZ投与21週間後まで観察されなかった。糖尿病性腎症モデルとしてアルブミン尿が継続して出現する病態の作成には血糖値だけでなく、脂質などその他の因子が必要であることが考察される。2) 両腎虚血再灌流直後にAGPを投与した結果、急性腎障害後に生じる腎線維化が抑制された。
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