本年度は、異なる嗅覚受容体を個々に発現した細胞が内包されたゲルのアレイを構築し、匂いに対するアレイの応答をパターンとして認識することで複数種類の匂い物質の検出を目指した。 前年度までの研究により、細胞をハイドロゲルにより包埋しても、ゲル内の細胞が匂い物質に応答することが確認されている。また、蛍光を厚み方向に蓄積し細胞のシグナル増強を行うことで、焦点面の前後の光もイメージセンサに伝えることができ、従来の平面培養では焦点面一層の細胞からの光をシグナルとしていたものを積み重なった複数の細胞からの光をシグナルとして得ることで、蛍光輝度を増強にも成功している。そこで、これらの知見を活かしながら細胞をアレイ化する方法として、細胞をアガロースゲルに包埋し、各ゲルを積層したのち、垂直にスライスした断面を用いることで、各細胞が縞状にアレイ化する方法を考案した。本方法ではスライスによって一度に複数の同一アレイを得ることができ、また、積層回数を変えることで、アレイ化する細胞の種類を増減することも可能になる。本方法によって、高さ方向に厚みを持ちつつ異なる種類の細胞をアレイ化するという利点を残しながらも、作製にフォトリソグラフィーによるマスクの作製など、専門的な道具を必要とせず、かつ細胞にダメージを与えずアレイ化を行う。アレイ化した2つの嗅覚受容体を用いて、それぞれどちらか一つの受容体が反応するものと、両方の受容体が反応するものの3種類の匂い物質の分類を行った。
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