研究課題/領域番号 |
18J23112
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関 大吉 京都大学, 総合生存学館, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 宇宙天気 / フィラメント / SDDI / フレア予測 / コロナ質量放出 / フィラメント噴出 / 太陽 |
研究実績の概要 |
2016年5月1日から2017年12月31日までのSDDI観測ログを元に、フィラメント噴出例を41例見出した。そのうち12例に対し、内部運動の活発さ(=視線方向速度場の標準偏差)を調査したところ、11例に対し、先行研究(Seki, D. et al., ApJL, 2017)と同様の内部運動の上昇が、噴出に先立って確認された。上昇の有無はフィラメントのタイプ(周囲の磁場の強さによる)・プラズマ塊の観測有無には無関係であった。また、上昇が見られなかった1例は、太陽の縁近くで噴出が起こっており、見かけ上視線方向と垂直方向に飛んで行ったため、観測できなかった可能性がある。以上から、内部運動の活発さを追跡すれば、フィラメント噴出を予測できる可能性が高い、と結論づけた。
このほか、フィラメント全体の視線方向の動き(=視線方向速度場の平均)に応じて、視線方向速度場の平均は~ 0 km/sで一定に対し、標準偏差が2-3 km/sから4-5 km/sに上昇していくPhase 1, 平均も標準偏差も大きく変化するPhase 2の2つのフェーズがあることが確認された。特に今回の調査では、 (1)Phase 1 の継続時間は、周囲の磁場が弱いフィラメントの方が10倍程度長いこと、 (2)Phase 1における標準偏差の上昇量は全て2-3 km/sから4-5 km/sであったこと、 が明らかになった。以上の結果は論文としてまとめられ、日本天文学会の学術雑誌Publications of the Astronomical Society of Japanに掲載を受理された。本年度の研究により、研究目的①「フィラメント観測による太陽面爆発発生の予測方法の確立」は達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(内定日から採用日まで) 2016年11月5日のフィラメント噴出例について、太陽面爆発(フレア)の規模・時間・場所・大きさ、プラズマ塊の速度・方向・広がり、フィラメントの噴出時間・場所・3次元噴出速度場・長さ・種類・周辺の光球磁場強度・3次元磁場情報(光球磁場から外挿したポテンシャル磁場)・内部運動の活発さ、惑星間空間(太陽-地球空間)における電波変動・プラズマ塊情報、地磁気の変動量・時間、をまとめる予定であったが、採用1年度目末まで要した。現在論文執筆中であり、2019年中に、米国The American Astronomical Societyの学術誌、The Astrophysical Journalへの掲載受理を目指す。
(1年目) 2016年5月1日から2017年12月31日までのSDDI観測ログを元に、フィラメント噴出例を41例見出した。そのうち12例に対し、内部運動の活発さ(=視線方向速度場の標準偏差)を調査したところ、9例に対し、先行研究(Seki, D. et al., ApJL, 2017)と同様の内部運動の上昇が、噴出に先立って確認された。本成果は論文としてまとめられ、日本天文学会の学術雑誌Publications of the Astronomical Society of Japanに掲載を受理された。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、米国のCommunity Coordinated Modeling Center(CCMC)というNASAゴダード宇宙 飛行センター内機関で、1年間在外研究を行う予定で ある(旅費/在外研究機関研究打ち合 わせ渡航費)。CCMCは米国内で「各宇宙天気関連セクターが求める情報を知り、適切な予 測モデルを開発 提供する場」としての役割を担っている。本機関で人工衛星の運用・通信 会社などの産業セクター、そして公的セクターが、宇宙天気予測情 報について「爆発の何 時間前に」「どの程度の規模の爆発を」「どの程度の正確さで」求めているのか調査す る。ニーズについて十分に情報 を得た後、同センターとの共同研究により、社会ニーズに 合う太陽面爆発予測モデルの開発へと着手する。なお、1年目の成果は、2年目に論 文とし て投稿し(その他/論文投稿料)、2年目の成果は各種国内・国際学会で発表する(旅費)。
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