研究課題
二年次計画段階で想定していた「宇宙天気に関わりのある産業・公的セクター」を、人工衛星利用企業へと絞った。それに伴い、在外研究先を、当初予定していたCCMCではなく、University of Cambridgeとした。なぜならば、University of CambridgeのあるCambridge 市内 には、(1) 太陽物理学に精通しているDepartment of Applied Mathematics and Theoretical Physics (DAMTP)、(2) 地球周辺の放射線環境の人工衛星への影響について積極的に研究しているBritish Antarctic Survey (BAS) 、(3) 低頻度甚大被害型災害のリスク研究に明るいCentre for the Study of Existential Risk (CSER)、といった研究機関があり、災害級の太陽面爆発による人工衛星への被害研究に、最適な場所だからである。宇宙天気の経済的影響に明るい経済学者と、BAS宇宙天気・高層大気チームと共同研究を行った結果、「極端太陽面爆発が発生した場合に、どのくらい人工衛星が喪失し、その結果どのくらいの経済的被害が発生するのか」という問いが、社会的ニーズに即した研究であると結論づけた。共同研究の成果は、「太陽放射線(Solar Energetic Particle; SEP)の、人工衛星喪失への影響」を、疫学の手法を用いて検証した。初期成果として、二つのエネルギー帯に属する累積陽子フルーエンスの比が、人工衛星喪失に、統計的有意に関わっていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
1. 英国における長期滞在期間中に、宇宙天気災害推定の社会的ニーズを調査した結果、「極端太陽面爆発(スーパーフレア)時の人工衛星への被害推定」が未開拓であり、特に「スーパーフレアが発生した場合、どのくらいの数の人工衛星が喪失するのか」というテーマが、重要であることを明らかにした。2. 上述のテーマに基づき、疫学の手法を用いて、「爆発に伴い発生する太陽放射線の人工衛星喪失への影響」を検証した。初期成果として、統計的有意に人工衛星喪失と相関をもつ要素(ある二つのエネルギー帯の、累積陽子フルーエンスの比)を発見した。3. また、「スーパーフレア時に、どのくらいの数の人工衛星障害が発生するのか」という関連テーマで、スーパーフレア時には、観測史上最大の爆発の場合の、約54倍の数の人工衛星障害が発生しうることを推定した。(国際査読誌Natural Hazardsへ投稿済み)4. さらに、関連他分野(太陽物理学)においても、地上望遠鏡で観測された太陽面爆発カタログに関する論文が、国際学術誌Sun and Geosphere に掲載受理された。そのほか、人工衛星の観測データにより推定された太陽面爆発の前兆について、国際学術誌Astrophysical Journal に投稿中である。以上の点から、本特別研究員は期待通りに研究を進展させているものと評価する
3 年目は、引き続きモデルの改良へ勤しむ。2 年目に得た社会ニーズを反映するような、地上望遠鏡のみを用いた爆発予測モデルの改善を行 う。なお現在、株式会社ブロードバンドタワーの根本茂氏らと協力し、氏が機械学習のプログラミング部分、申請者を含む太陽研究者達が太陽 面爆発予測スキームを担当し、太陽面爆発予測機の開発を目指している。この技術を本研究に応用することで、予測精度の改善を 期待してい る。最終的には、地上望遠鏡による太陽面爆発予測の限界を明確にし、これまでの研究成果 をまとめ、博士論文とする予定である
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すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 8件) 備考 (1件)
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~seki/sddi-catalogue/