今年度は、立体組織内に灌流可能な管腔ネットワークを形成する手法の確立に向け、血管内皮細胞を用いたスフェロイド内部への灌流可能な血管の導入に取り組んだ。昨年度とは目的達成のためのアプローチを修正し、二方向に形成された生化学物質の濃度勾配下における血管内皮細胞の遊走性を観察および評価可能なデバイスを作製した。それを用いることで、各種の生化学物質を添加した際の血管新生様のスプラウトの方向性および大きさを比較評価した。 具体的な方法として、両脇にゲルが存在する捕捉部を持ち、捕捉部のある中央流路、およびその両外側にゲルを挟んで隣接する二本の流路を持つ微小流路デバイスを設計した。このデバイスを用いて、血管内皮細胞および線維芽細胞からなる共培養スフェロイドを中央流路に流すことで捕捉できることを示した。次に、ゲルの外側にある流路に二つの異なる種類および濃度の生化学物質を流すことで、スフェロイドを挟んで二つの方向に異なる濃度勾配を形成できることを示した。最後に、提案するデバイスを用いて、二方向から成長因子や血管新生を促進する化学物質を導入した場合の、血管内皮細胞の遊走性を定量評価できることを示した。 また、血管内皮細胞、線維芽細胞および腫瘍由来細胞からなる三培養スフェロイドを用い、デバイス内で20日間以上の培養を行うことで、両外側のゲル中に形成された新生血管を介してスフェロイドにマイクロビーズを送液可能な流路を形成した。
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