研究課題/領域番号 |
18J23142
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青山 智彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | m6A修飾 / メチル基転移酵素 / U6 snRNA |
研究実績の概要 |
N6-methyadenosine (m6A)は、mRNAに多く見られる修飾塩基であり、様々な遺伝子発現制御の目印として生体内のタンパク質の発現を調節する。RNAのm6A修飾の有無によって、その物理化学的な性質が変化するだけでなく、遺伝子発現を制御するタンパク質との結合が調節されている。その結果、m6A修飾依存的に、スプライシング・RNA輸送・RNA分解・翻訳制御などが変化し、生体内の遺伝子発現が巧妙に制御される。METTL16は、特定の構造をもつRNAをm6A修飾するメチル基転移酵素であり、N末端側のメチル基転位活性ドメイン(MTD)とC末端側の脊椎動物保存ドメイン(VCR)から構成される。しかし、METTL16 がどのような分子機構でRNAをm6A修飾するかは明らかにされていなかった。本研究課題では、構造生物学的・生化学的な解析手法により、メチル基転移酵素によるRNAのm6A修飾機構の解明を試みた。 本研究では、METTL16のVCRの機能と構造に着目して解析を進めた。その結果、METTL16のVCRは、U6 snRNAに対するm6A修飾を促進することを明らかにした。また、VCRの結晶構造を決定したところ、U6 snRNA特異的な3'末端ウリジル化酵素(TUT1)のRNA結合ドメイン(KA1)と非常によく似ていることが示された。そして、METTL16のVCRは、U6 snRNA内の内部ステムループ(ISL)に結合してU6 snRNAの構造を不安定化し、修飾に適した立体構造への変換を促進することで、U6 snRNAのm6A修飾を効率化するという反応モデルを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
METTL16のVCRがRNAの構造変換を促進し、MTDによるm6A修飾配列の認識を補助するという新たなRNAのm6A修飾反応モデルを明らかにする事ができたため。また、本研究課題の内容は、査読付きの国際学術誌に投稿して採択されたことも踏まえ、表記のような評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、METTL16とU6 snRNAの複合体結晶構造の決定を試みる。これまでの研究で示したMETTL16によるRNAのm6A修飾反応モデルを、結晶構造として可視化することで分子基盤の詳細を明らかにする。また、RNA foot-printing assayなどを用いることで、VCRがRNAの構造変化を引き起こすことを裏付けたいと考えている。そして、METTL16のVCRが、U6 snRNAのm6A修飾を介してどのような生物学的役割をもっているか模索する。
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