研究課題/領域番号 |
18J23156
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹内 恵美 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 再発不安 / がんサバイバー / 介護者 |
研究実績の概要 |
がんサイバイバーとは、がん治療を終えたがん患者だけでなく、その家族や介護者が含まれると定義される。本研究は、臨床的介入が必要となる過剰な再発不安を抱え、生活に悪影響が生じているがん患者およびその介護者の臨床像を情動・認知・行動の側面から明らかにすることを目的としている。 先行研究において課題となっていた再発不安の構成概念を明らかにするため、再発不安の尺度について系統的レビューを行い、先行研究のモデルをもとに情動と認知に分類した。その結果、情動要因には恐怖が主な概念として示された。認知要因については、再発および健康の心配、再発後の結果に対する心配が主に挙がり、加えて再発リスクの知覚、反すうが示された。これらの結果から、再発不安の介入方法として、恐怖感情や反すうなどに対する対処スキルの獲得、再発の可能性や再発の予兆の見つけ方等の情報提供が効果的であることが示唆された。また、情報収集を目的に、国際サイコオンコロジー学会にて開催された再発不安のワークショップに参加した。その介入効果を実感すると同時に、セッション数の多い点や専門家による介入が必要である点等の実施可能性の課題があると感じた。 さらに、30年度は、がん患者の介護者の再発不安ががん検診の受診率に影響を及ぼすかについての研究を行った。マイアミ大学に留学し、American Cancer Societyが実施したがん患者の介護者に対する大規模調査のデータをもとにデータ解析を行ったところ、再発不安の程度が高いほど大腸がん、乳がん、前立腺がんの検診の受診率が上がることが示された。がん患者同様、再発不安が高いことにより介護者は医療機関の受診が増加する傾向にある可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、がん患者の再発不安の構成要因の検討に関する論文を投稿することができた。さらに、がん患者の介護者が抱える再発不安ががん検診の受診率に与える影響についての研究を遂行しており、その成果は米国サイコオンコロジー学会にて発表し、最優秀口頭発表賞を受賞することができた。現在は論文執筆がほぼ完成しており、近日海外の学術雑誌に論文を投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
がん患者の再発不安に関する研究は近年多く行われているが、その介護者に関する研究はまだ少ない。介護者において再発不安がどのように日常生活へ影響を及ぼしているかについて更なる研究を行い、がん患者およびその介護者の双方を対象に相互的支援を目的とした介入方法を検討していきたい。 31年度は介護者の再発不安ががん検診受診率に与える影響に関する論文を海外の学術雑誌に投稿する。並行して、患者および介護者へのアンケート調査の実施を目指し、研究計画書の作成し、研究実施実施場所を探索し協力者への依頼等を行い、倫理委員会からの承認を得る。
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