研究実績の概要 |
本年度は、マイクロデバイス上で酵素活性を検出可能な、数十~数百の酵素反応部位を有する蛍光プローブライブラリを開発することで、生体内に存在する多数のタンパク質を1分子レベルかつ網羅的に検出し、疾患の早期診断や患者の層別化に資するような新規バイオマーカーを探索することを目指した。 このような目的においては、生体内に存在する多様な酵素活性を網羅的に検出可能なプローブライブラリを開発することが必要であるため、簡便かつ同時並行的に多数のプローブを合成するための新たな方法論の確立にも取り組んだ。具体的には、化学合成によって生成する目的の蛍光プローブを、ビーズを用いたアフィニティー精製によって簡便に精製するライブラリ調整法(Synthesis-based on affinity separation)の概念を利用し、ホスホン酸を有する蛍光母核を用い、phos-tagによるaffinity精製を利用した合成法を確立した。 この方法論により、実際にpeptidase, protease, glycosidase等の活性を検出可能な、80種類を超える蛍光プローブライブラリの開発に成功した。 また、本プローブライブラリを用いた実証実験として、国立がん研究センター早期診断バイオマーカー開発部門の本田一文先生のご協力のもと、すい臓がん患者に由来する血漿サンプル中から、実際に20種類以上のプローブを用いて酵素活性を1分子レベルで検出することに成功しており、本手法でタンパク質バイオマーカーの効率的探索をおこなうことが可能であることを示した。 今後は、より多数の検体を用いたスクリーニングを行い、有望なシーズ活性については、より精度よくこれを検出するためのプローブ開発や病態との関わりの理解を進め、さらに大規模な検体サンプルを用いた検証を行い、疾患の実態を反映したバイオマーカーとして確立していくことが期待される。
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