研究課題/領域番号 |
18J23248
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
尾上 知佳 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ファーマコメトリクス / 薬物動態 / 薬力学 |
研究実績の概要 |
平成30年度における研究計画は、(1)患者データの収集および(2)ファーマコメトリクス (PMx) モデリングであった。(1)では、高齢者、肥満患者および腎機能低下患者等の幅広い患者層を含む母集団および0-20歳までの小児患者について、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 感染症治療薬の薬物血中濃度および有効性・副作用発現に関連するバイオマーカ値を集積した。集積したデータについて(2)PMxモデリングを実施し、経時的な薬物血中濃度および有効性の変動を同時に予測することが可能なPMxモデルを構築するとともに、副作用発現に関わる因子探索や投与設計シミュレーションを実施した。また、これらの結果を論文としてまとめ、学術誌(2編)に筆頭著者として投稿すると同時に、国際学会および国内学会において発表した。1980年代以降、抗菌薬の不適切な使用による薬剤耐性菌の増加が問題となっており、感染症治療における抗菌薬の適正使用および至適投与の実施が求められている。しかし、MRSA感染症をはじめとする重症感染症患者の多くは、高齢、極度の腎・肝機能の低下等、特殊病態を背景に有しており、これらを考慮した投与設計が不可欠である。平成30年度における研究成果は、これらの特殊病態患者における経時的な薬物血中濃度および有効性の変動を予測することを可能にするものであり、患者個別の至適投与の推進に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度における研究計画は、(1)患者データの収集および(2)ファーマコメトリクス (PMx) モデリングであった。(1)および(2)ともに計画通り順調に進行しており、本研究課題における成果を学術誌2編に筆頭著者として投稿すると同時に、国際学会(1回、筆頭)および国内学会(2回、筆頭)において発表した。また、投稿した論文のうち1編は、平成31年3月に既に受理されている(査読有)。現在も腎・肝移植患者および周産期患者を対象に患者データの収集を続けており、十分な症例数が集まった段階でPMxモデリングを実施したいと考えている。また、平成31年度では平成30年度で報告したPMxモデルを用いた投与設計シミュレーションソフトの開発に取り組みたいと考えており、プログラミング言語(PythonおよびC#)の習得にも力を入れた。平成30年度における研究計画は十分に達成できており、平成31年度の研究計画実施のための準備も進められていることから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究を通して、特殊病態患者における経時的な薬物動態およびバイオマーカ値の変動を精度よく予測するためには、従来のPMx解析手法では限界があると感じた。そこで、ディープラーニングを利用した新たなPMxモデリングの手法を探索している。ディープラーニングをPMxモデリングに応用することで、従来の手法では抽出しきれなかったデータの特徴を抽出、学習することが可能となり、特殊病態患者における予測精度を向上させることが期待される。ここで問題となるのは、ディープラーニングによる学習では過学習を防ぐために大量のデータを用いる必要があるのに対して、患者から大量のデータを得ることは倫理的側面から困難であるということである。そこで、Generative Adversarial Net (GAN) に着目した。GANを用いることで少量のデータを模倣して擬似データを生成することが可能であり、限られたデータしか得られないPMxモデリングにおいて有用であると期待される。平成31年4月に九州工業大学にて短期留学を行い、研究の遂行に必要な技術を習得した。平成31年度または32年度中に本研究成果を学会および学術誌において報告する予定である。
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