研究課題/領域番号 |
18J23248
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
尾上 知佳 富山大学, 医学薬学教育部(薬学)薬科学専攻, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ファーマコメトリクス / 薬物動態 / 薬力学 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
平成31年度の研究計画は、小児患者や重度の腎・肝機能障害を背景に有する特殊病態患者を対象とした、ファーマコメトリクス (PMx) 解析の実施であった。リネゾリド (LZD) を治療目的で投与された小児患者のデータを解析し、日本人小児患者における母集団薬物動態パラメータを推定した。本研究では、小児患者においてLZDは体重に基づく投与量調節が行われているのにも関わらず、薬物血中濃度のばらつきに個体間の差が大きいことが明らかとなり、薬物血中濃度をモニタリングすることが望ましいと示された。本研究結果は学術誌に筆頭著者として投稿し、受理された。また、特殊病態患者における薬物動態・薬力学 (PKPD) の予測を改善する方法として、(1) ニューラルネットワークを用いた薬物血中濃度の予測および (2) Quantitative Systems Pharmacology (QSP) モデルの応用を検討した。(1) では、ニューラルネットワークを用いることで従来の母集団薬物動態モデルと比較して薬物血中濃度の予測精度が改善することが示された。本研究結果は、国内学会で筆頭演者として報告を行った。(2) では、次数が大きく複雑な構造であるQSPモデルをlumpingを用いてモデルの次数を削減し、本来のQSPモデルの持つ生物学的意味を維持しつつ、より簡素なモデルを構築する手法を検討した。現在、解析は終了しており、令和2年度中に学術誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度の研究計画は、小児患者や重度の腎・肝機能障害を背景に有する特殊病態患者を対象とした、ファーマコメトリクス (PMx) 解析の実施であった。小児患者を対象としたファーマコメトリクス (PMx) 解析を実施し、研究成果は既に学術誌に筆頭著者として投稿し受理されている。また、更なる予測精度の向上を試みて、(1) ニューラルネットワークを用いた薬物血中濃度の予測および (2) Quantitative Systems Pharmacology (QSP) モデルの応用の2つの課題に新たに取り組んでいる。課題 (1) については、既に研究成果を国内学会で報告した。現在追加検討を行っており、検討が終了次第令和2年度中に学術誌へ投稿する予定である。課題 (2) についても既に研究の最終段階に入っており、令和2年度中に国内学会および学術誌にて研究成果を報告する予定である。平成31年度における研究計画は十分に達成できていることから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、現在も取り組んでいる(1) ニューラルネットワークを用いた薬物血中濃度の予測および (2) Quantitative Systems Pharmacology (QSP) モデルの応用の2つの研究課題を継続して実施するとともに、(3) 投与設計ソフトウェアの開発に取り組む。(1)および(2)については、研究の最終段階に入っており、令和2年度中に研究成果を報告する予定である。(1)に関しては、ランダムフォレストによる至適薬剤選択モデルの開発やgenerative adversarial networkを応用した希少疾患データ解析等も新たに検討する予定である。(3) の投与設計ソフトウェアは、統計解析ソフトRおよびWebアプリケーション作成用パッケージShinyを利用して既に作成に取り掛かっており、令和2年度9月頃までに完了・公開の予定である。また、今後の解析データを集積するため、継続して高速液体クロマトグラフィーによる薬物血中濃度測定を実施する。
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