2020年度の研究の目的は、2019年度までに構築したファーマコメトリクス (PMx) モデルを実際の患者治療で応用できるように投与設計支援ソフトウェアを開発すること、および外部データを用いてPMxモデルの評価・バリデーションを行うことであった。抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 薬における薬物血中濃度および副作用発現を経時的に予測可能な複数のPMxモデルを対象に外部評価を実施し、その結果に基づいて投与設計支援ソフトウェア「Pycsim」を開発した。本検討の結果は学術雑誌に投稿し、既に出版されている。投与設計支援ソフトウェアは、感覚的かつ簡便な操作で投与設計シミュレーションが可能なソフトウェアをコンセプトとし、統計解析ソフRおよびshinyパッケージを使用して開発した。現在、ローカル環境で使用可能なものを希望する医療施設に対して無償で配布している。また、薬物血中濃度や有効性・副作用発現を経時的に予測する新規手法として、人工ニューラルネットワーク (ANN) を応用したファーマコメトリクスモデルの構築を試みた。従来のコンパートメントモデルにANNを組み合わせることにより、薬物血中濃度の予測精度が向上することが示された。また、ANNでは時系列データの解析が困難だが、コンパートメントモデルと組み合わせることによりその問題を解決した。本研究の結果は、学術雑誌にて報告を行い、既に受理されている。
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