研究課題/領域番号 |
18J23289
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高橋 亮 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 高次トポロジカル絶縁体 / ワイル半金属 / トポロジカル絶縁体 / バルク・エッジ対応 |
研究実績の概要 |
トポロジカルなバルクと、特異な「表面」の次元が2以上離れたトポロジカル絶縁体は、高次トポロジカル絶縁体と呼ばれる。準結晶では、空間次元よりも高次の次元のトポロジカル相が実現していると期待されるが、2次元以上の準結晶では、射影される前の次元と準結晶の空間次元は2次元以上離れている。そこで、2次元準結晶におけるトポロジカル相は、高次トポロジカル絶縁体として実現されると予想し、初年度は高次トポロジカル絶縁体に関して研究を行った。特に、空間反転対称性に保護された場合に着目し、主に二つの観点から研究を行った。 (1)高次トポロジカル絶縁体と通常のトポロジカル絶縁体との間に出現する、特異なワイル半金属相に関する研究を行った。このワイル半金属相は、バルクと表面での性質は、通常のワイル半金属と同じであるが、二つの表面の交わりであるヒンジのスペクトルは、バルクの高次トポロジカル数に起因する、特異な形状を有することが分かった。 (2)空間反転対称性に守られた高次トポロジカル絶縁体に対し、バルク・ヒンジ対応の一つの証明を与えた。本研究では、連続的なパラメータによって、表面を出した系と表面のないバルクの系を連続的に結び、その間で系の空間反転固有値がどのように変化すべきかを調べた。その結果、空間反転対称性に保護された3次元高次トポロジカル絶縁体は、表面を出した時にギャップレスであるか、そうでなければ表面を出した系全体が量子(スピン)ホール絶縁体になっているという事を示した。これまでのバルク・ヒンジ対応の証明は、一部の模型にしか適用できなかったが、本研究は空間反転対称な任意の強束縛模型に適用可能である。また、証明に用いた手法を1次元・2次元の系に適用することで、これまでに知られていたバルク・エッジ対応の証明の別証明を得ることにも成功した。本研究結果は現在論文にまとめており、今後学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高次トポロジカル絶縁体におけるバルク・ヒンジ対応の一般的な証明など、研究計画当初には予想していなかった成果を得られたという意味で、当初の計画以上に進展していると言える。この結果は2次元の回転対称性にも拡張できる可能性があり、今後の発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の研究結果が2次元の回転対称性の場合にも拡張可能かどうかを調べる。また、本年度の研究の手法を拡張して、当初の目的である準結晶も含めた形の定式化が出来るかどうかを調べる。
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