【肝細胞認識に必要な6-cysタンパク質P-41の局在】 昨年度までの研究によって、P41が肝細胞を認識し運動ステージから寄生ステージへの転換に必須な分子であることが明らかになった。本年度は、昨年に確立したdouble-CRISPR Cas9 システムを利用し、P41タンパク質のN末端にエピトープタグを挿入し、局在の検出に成功した。その結果、P41がP36pと同様に、スポロゾイトのマイクロネームに局在することが明らかになった。この結果により、P36pとP41が同様の働きを担っているというこれまでのノックアウト研究の結果が、タンパク質の細胞内における挙動という面からも確認された。 【転写因子AP2-Sp3の解析】 我々はこれまで、スポロゾイト期の転写を制御する分子としてAP2-SpとAP2-Sp2を解析してきた。AP2-Spは蚊の中腸におけるスポロゾイト形成期初期から発現し、スポロゾイト期全体の転写制御を担う。一方、AP2-Sp2は蚊の中腸において発現し、スポロゾイト形成に必要な遺伝子群の制御を担う。しかしながら、これらのみで中腸スポロゾイトから唾液腺スポロゾイトへの性状の変化を説明することはできない。そこで、我々は機能未知のAP2ファミリータンパク質の発現プロファイル解析結果から、AP2-Sp3を同定した。さらに、AP2-Sp3にGFPタグを融合させ、抗GFP抗体を用いたChIP-sequenceによって、標的遺伝子を網羅的に同定した。その結果、スポロゾイトの肝細胞侵入に必要な分子が主に同定された。また、蚊の中腸から唾液腺への移行に関与するタンパク質も同定された。この結果から、AP2-Sp3がAP2-Sp2以後の機能、すなわちスポロゾイトの唾液腺以降や肝細胞侵入期の遺伝子群を制御していることが明らかになった。
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