研究実績の概要 |
本研究では、環境や人体に対して一切無害であり、かつ、塗料、セラミックス、プラスチックなどといった幅広い用途に適した新規な優環境型の黒色遮熱、赤色無機顔料を創製し、得られた顔料の発色機構や近赤外反射機構の解明を目指した。 平成30年度は、高い赤色度を示す新規な優環境型無機顔料の開発を目指し、無害な元素のみから構成されるCa14Al10Zn6O35を母体材料に選択し、発色源としてFe3+イオンを固溶させた試料を合成した。その結果、Ca14(Al0.85Fe0.15)10Zn6O35において、最も高い赤色度(CIEL*a*b*表色系においてa* = +14.6)が得られ、試料は鮮やかな橙色を呈し、市販橙色顔料を遥かに凌ぐ耐熱性を有することを明らかにした(Chem. Lett., 2018, 47, 1522)。加えて、Bi2O3を母材に、Bi3+サイトをTa5+イオンで部分置換した(Bi1-xTax)2O3+2xを合成した。その結果、正方晶型の(Bi0.97Ta0.03)2O3.06において、最大の赤色度(同表色系においてa* = +17.3)が得られ、鮮やかな橙色を呈した(ACS Omega, in press)。 黒色遮熱無機顔料については、前年度までに開発したCa2Mn0.85Ti0.15O4顔料に、Zn2+をさらに固溶させたCa2Mn0.80Ti0.15Zn0.05O3.95が十分な黒色度と高い日射反射率(JIS K 5602規格で75%)を示し、Ca2Mn0.85Ti0.15O4(日射反射率74%)と比較して、日射反射率を下げることなく、より純粋な黒色を呈した。また、Ca2Mn0.80Ti0.15Zn0.05O3.95は、市販の黒色遮熱顔料よりも濃い黒色を呈しながらも、市販顔料を凌ぐ日射反射率(市販顔料は最大でも50%)を有することを明らかにした(論文執筆中)。
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