研究実績の概要 |
MUP1と代表的な感作性物質数種類との結合性を、MUP1の既知のリガンドを用いた競合阻害試験を行うことで検討した。その結果、極強度感作性物質である2,4-dinitrochlorobenzene (DNCB), FITC及び中等度感作性物質である2-mercaptobenzothiazole (MBT),軽度感作性物質であるα-hexyl cinnamaldehyde (HCA), CitralがMUP1と結合することが明らかとなった。その一方で、極強度感作性物質のbenzo(a)pyren, 強度感作性物質のBenzoyl peroxide、軽度感作性物質のcinnamyl alcohol,中等度感作性物質のフタル酸無水物はMUP1と結合しないことが明らかとなった。 以上の結果から、MUP1とハプテンとの結合性は既に報告されている感作性物質の感作強度と一致しないことが明らかとなった。これは申請書での仮説と一致しており、MUP1が既知のハプテンとタンパク質との結合様式であるリシン・システインを介した共有結合とは異なる結合様式でハプテンと結合する可能性がより強められた。 in vivoにおけるMUP1の関与を検討するために、結合性が確認されたハプテンの1つであるFluorescein-4-isothiocyanate (FITC)を用いて、MUP1を高発現しているトランスジェニック(TG)マウスにおけるFITCの抗原提示細胞(APC)活性化能を検討した。皮膚にFITCを塗布し、所属リンパ節における活性化樹状細胞(CD11c+細胞)について検討したところ、FITCの蛍光をもつCD11c+細胞の数がTGマウスにおいて有意に高いことが明らかとなった。 以上の結果から、MUP1がハプテンと結合しキャリアタンパク質としてAPCへの抗原提示及び所属リンパ節への移行を促進する可能性が示唆された。
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