研究課題
協調運動の問題の特徴については、昨年同様に5歳児健診にて微細運動課題実施中の様子をビデオ撮影し、動画から手部の動きを2次元モーションキャプチャー解析を行いデータを蓄積した。また、描線運動を含む課題における筆記具操作方法についても検討を行なった。動画から筆記具把持方法と上肢と机の接触状態を判定し、描線スキルとの関連を検討した結果、DCD児やASD児を含む発達障害群には机と上肢が接触しない児の割合が多く、また接触がないことと描線スキルの低さに関連が認められた。発達障害児の描線スキルへの介入の際は、上肢を机上面に接触させることにより操作の安定性の向上や接触部からの感覚フィードバックを得られるように支援することが有効である可能性が示唆された。次年度は診断ごとの特徴を検討する。協調運動の問題に影響する因子として、感覚処理特性に着目し検討を行った。感覚処理特性の評価には保護者が回答した日本版感覚プロファイル(Sensory Profile: SP)を用いた。ASDやADHDを除外したDCD群と発達障害診断なし群を比較した結果、DCD群は3つの象限(低登録、感覚過敏、感覚回避)と4つの領域(聴覚、前庭覚、触覚、口腔感覚)において得点が高く、DCD児にも幅広い感覚処理の問題が存在することが明らかになった。次年度は彼らの協調運動の問題との関連を詳細により検討する。さらに、DCD児の支援へと役立てるため、彼らの行動面や情緒面の困難についても検討を行なった。5歳児健診スクリーニングにて保護者および園の教師が回答したStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)を用いた。診断なし群と比較した結果、DCD群は教師評価における多動、仲間関係、向社会性、総合困難度の項目で問題を多く有することが示された。次年度は継時的な問題の変化についても追加解析を行う。
2: おおむね順調に進展している
2019年度は当初の計画通り、5歳児発達健診参加児を対象にDCD児の運動の特徴、発達障害児の協調運動の問題に影響する因子を検討した。さらに、より効果的な介入方法へと繋げるため、DCD児の日常生活における行動面や情緒面の困難の検討を行った。これらの研究により得られた成果は国内および国外での複数の学会にて発表し、また筆頭著者として国際誌へ論文を投稿した。以上のことより、上記の進捗状況と判断した。
発達障害児の微細運動の特徴については、トラッキング作業が完了し次第データの統計的解析を行う。また、筆記具操作に関してもサンプル数を増やしたのちに、診断ごとの影響を考慮してさらに検討を行う予定である。DCD児の協調運動の問題に影響する因子については、問題が示唆された感覚機能に関して、彼らの協調運動能力との関連についても詳細に検討し、結果を取りまとめた上で国際誌へ論文投稿する。行動面や情緒面の困難については、年齢を考慮した支援の必要性を探るため、継時的な問題の変化についても追加解析を行う予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件)
NeuroReport
巻: 31 ページ: 189~196
10.1097/WNR.0000000000001396