研究課題/領域番号 |
18J23448
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
安達 勇介 愛知県立大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 衛星コンステレーション / ひまわり8号 / 反射率 / 相互校正 |
研究実績の概要 |
本研究は,大規模衛星観測網―次世代型静止軌道衛星と多数の低軌道衛星―によって取得されるデータのうち,地表面反射率の一貫したデータを作成することを目標としている. 初年度は,静止軌道衛星と低軌道衛星のデータを変換するための前処理の部分について知見を深めたほか,変換に使用する物理量の逆算アルゴリズムの検証作業を進めた. まず初めに静止軌道衛星と低軌道衛星の地表面反射率の比較を行うための環境構築に着手した.2つのセンサに対して同じアルゴリズムで行う大気補正手法を開発・実装したほか,雲の影響を取り除くための手法や,衛星データの管理・分析のためのコードを開発したことで,今後の研究の基盤となるシステムが出来上がった. その後,静止軌道衛星ひまわり8号/AHIと低軌道衛星Terra/MODISの地表面反射率の比較を行った.対象領域には2つの衛星の観測角度(方位角)が一致することのない,中緯度森林領域を選択した.このような領域であっても,センサ間で誤差が少なくなるようにデータを選択することで,センサ間の変換の時点に残る誤差を最小限に抑えることを目指して研究を進めた.最終的に,相対的な方位角を合わせるようにデータを選ぶことで,一部の季節ではより誤差が少なくなることが分かり,これをRelative Azimuthal-angle Matching (RAM) として提案した. 物理量の逆算については,水田や森を対象とした予備実験を進め,低軌道衛星LandSat-8/OLIから,植生アイソラインの逆算によって得られる葉面積指数(LAI)の出力の検証を行った.その結果,稲の成長,刈り入れ時期に則したLAIを出力できることが分かり,土壌水分量に依存する植生指数よりも安定して地表面の物理量を得ることができるということが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,実験環境の構築と前処理の研究,逆算の検証作業を進め,成果発表をほぼ予定通りに行うことができたため,おおむね順調に進展していると判断している. 成果発表については,学会発表2件と論文投稿を行うことができた.本年度に進めた静止軌道衛星と低軌道衛星のデータを扱う際の前処理の部分に関して,組み合わせる低軌道衛星の撮像条件による影響や,反射率の比の季節変化などについての初期段階の成果を国際会議SPIE Asia Pacific Remote Sensingで発表した.その後,2つの衛星データにおけるそれぞれの衛星と太陽の間の相対的な方位角を合わせることを検討した検証結果を国内会議リモートセンシングシンポジウムで発表することができた.この成果は年度末に論文にまとめ,提案手法,Relative Azimuthal-angle Matching(RAM)について,静止軌道衛星による地表面観測の特集号(国際誌)に論文を投稿した(※現段階では受理され,オープンアクセスで公開されている).
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今後の研究の推進方策 |
今後は,初年度の研究成果を踏まえて,2つの研究を予定している. (1)静止軌道衛星と低軌道衛星の間での反射率レベルの各種誤差要因の特定に取り組む.初年度に行った,ひまわり8号/AHIとTerra/MODISとの比較では,地表面の被覆状態や衛星と太陽の間の相対的な方位角の違いが比較結果に与える影響が明らかになった.今後はそれらに加え,大気・太陽天頂角・高度などの違いが与える影響,およびその傾向を実データとシミュレーションで調査する.これら誤差要因それぞれの影響の大きさの観測地点による傾向についても調査を行う. (2)変換手法の構築に関する研究を進める.初年度に実施したLandSat-8/OLIを使用した植生アイソライン方程式によるLAI逆算の予備実験では,手動で与えたパラメータを使用して,水田の稲の成長・刈り入れに則した値を出力できることが分かった.今後は,植生・土壌アイソライン方程式もしくは,各種物理量に対応した分光指数(spectral index)によって地表面の物理量を反射率から逆算し,その結果の違いがどのようにセンサの特性を表すのかを検証する.物理量の逆算結果を等価にした際に得られたパラメータ群を使用した変換手法の構築に取り組む.
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